政府官僚の数々の不正問題や役得の発覚、公務員制度改革などで官僚のあり方が問題になっている。
13日のテレビ朝日の「サンデープロジェクト」でも江田けんじ衆院議員、高橋洋一 東洋大学教授、上山信一慶応大学教授、岸 博幸慶応大学院教授の所謂脱藩官僚を集めて、政治家は政治主導といいながら、実際には官僚の手のひらで踊っていること、そして官僚が如何に政治家を操縦しているかについて話させていた。
私も政治家と官僚で政治家の官僚の関係について書いた事があるが、今日は普通のおっさん眼からみた政治家と官僚の比較をして見た。
この中で便宜上官僚とは国家公務員試験第一種試験を合格して中央省庁に採用された人、一般職員とは同二種、もしくは三種試験を合格して採用された人を示すとこととする。
[政治家と官僚、一般職員の比較]
・立場
政治家:国民の投票で決められるので、立場は安定していない。
極端に言えば人気商売だ。
国民の代表ということにはなっているが、実は地域や支持母体の利益代表であることも多い。
官僚:政治家と違って自分たちは日本全体のことを考えて仕事をしていると言う自負がある。
一度就職すれば、余程の悪事をしない限り一生その立場は保証されている。
それで彼らは政治家のように目の前の選挙を気にせずに長期的な視野でものを考えられる。
昇進に伴う肩たたき制度のため、それ以後の就職保証のために、種々の法人などを作る。
人件費は固定経費として国会審議の対象外となっている大福帳式の会計システムのために、いくらさぼっても地位は安泰だ。
一般職員:
いくら頑張っても昇進の限度が知れているので、モラルが低下する可能性がある。
・基礎的な能力
政治家:金、地盤、経験など条件が揃えば、誰でも国会議員になれるので玉石混交になりやすい。
極端に言えば、口先一本でも旨く行けば当選する。
官僚:試験で選抜されるので少なくとも一定の学力はあるが、最近、学校教育で問題になっている自分で考える力、問題を発掘する力まであるかどうかの保証は何もない。
・専門分野の知識
政治家:僅かの学者出身か、特定分野の出身者を除いて、専門分野の職業の経験者は少ない。
特に後期のように今の日本に必要な企業の経営者クラスからの転身者が少ない。
官僚出身の人達は次の官僚の範囲の知識しかない。
官僚:担当範囲では専門家であるが、幹部育成のための2~3年ごとの転勤で広範囲の知識は持つが、細かいことは判らないため、社保庁の年金問題のように一般職員にまかせたりその言いなりになりかねやすい。
政治の欄で書いたような企業現場の知識は殆どない。
一般職員:専門知識を国政に反映できないのでモラルの低下を招く。
・組織
政治家:自分達の主張や生き残りのための勢力争いなどで、ばらばらに成りやすい。
党創立以来のデータの蓄積をする程の要員をもっていない。
そのこと政治に関する限られたデータを個人で収集するか、官僚組織に頼るほかない。
それで官僚に対して不利なことをすると手ひどい陰湿な反駁を食うことに成りやすいので、官僚に対して威張っている人でも内心は遠慮しやすくなる。
野党も政府を攻撃するのに政府の役人から資料を貰わねばならない。
官僚:各省別の人事管理だから定年までの地位保証などで強い団結力がある。
各省が出来てからの長年のデータとノウハウの蓄積がある。
これからグルーブとしての総合力ははるかに官僚組織の方が大きい、それで今も言われているような官僚主導の政治に成りやすい。
考え方が自分の所属する省庁の考えに固まりやすい。
人事権を幹部に握られているので、特に若手の人達の自由な発想が活かされない。
・国民の意識の反映
政治家:選挙という試練があるので、国民の意識は無視出来ない。
その為に中には地域や支持母体の日本全体を考えない利己的な要求に乗りやすい。
最近の与野党のばら蒔き政策がそうだ。
官僚:転勤毎に昇任してゆくので、国民から遊離した存在に成りやすい。(*注1)
一般職員:実際に現場を持つ人達は国民の反応は知っても、身分制の障壁のために、それが政治に活かせない可能性が大きい。
・金銭、経営などの経済感覚(*注2)
政治家:企業などで経営に携わった人は殆どいない。
国の経営に関係する金は全て税金で独りでに入って来る。金は親方日の丸だ。
官僚:企業で経営に携わった人はほぼ絶無
税金で独りでに入ってくる。金は親方日の丸だ
・問題意識
政治家:失敗すれば次の選挙の落選が待つので、ある程度の頬かむりはしても、問題意識を持っていなければ政治生命は終わりになる。
・官僚:前記のように、地位保全が約束されていること、現場である国民との接触が薄れるので、問題意識が薄くなる。
国のために自分達のやりたいことを政治家の党利党略で妨げられてやる気を無くし、モラルの低下をきたす。。
先に述べた予算制度のための原価意識の欠如が問題意識の欠如に繋がっている。
一般職員:実際に現場を持つ人達はそれなりの問題意識はあっても、官僚とのコミュニケーションの関係でそれが旨く活かされない可能性がある。
・責任感
政治家:自分で責任を認めることは政治生命の終わりと成りかねないので、頬被りしやすい。
政治家にとって都合の良い事にムードに弱く、忘れっぽい日本人の国民性がそれを許していることもある。
官僚:野党やマスコミから予算の無駄遣いを追求されても、内心は最終責任は自分達の上に立つ大臣に責任があることになっているので何の責任も感じない。
責任の追求以前に、使い切りの予算制度のために、その成果の追跡もないか不十分→予算案に対する効果測定なし→従ってそれに対する官僚の評価もなし。
[民主党へ]
私は今まで私が考えた問題点について素人なりの提案をしてきたが、政治家と官僚の問題は範囲が広過ぎて、書き切れないのでもしご興味のある方は下記の資料を参照して頂くとして、ここでは民主党に付いての提言だけをして置きたい。
臨時国会を前にして、民主党は種々のばら蒔き政策を発表したがその財政上の裏付けは公表されていない。(どうせ与党から拒否されるので考える必要もないから、国民に気に入る様なことを言いたい放題に言えば良いと思っているのか。)
問題の後期高齢者医療制度については、この制度廃止を唱えるだけで、その対案は内容だ。
政府攻撃の急先鋒の長妻さんは「実は党内で既に持っているが、これを今提出すると国会が混乱するばかりなので出さないのだ」と理由にもならぬことを言っていた。
国民は海上給油の反対で渋々出した実行不可能な対案を知っているので、仮に高齢者医療制度の対案はあるにしても録でもない対案だろうとは容易に想像出来ることだ。
このような耳障りの良いマニフェストばかり並べて、次の衆院選で天下を取っても、それこそ一日天下で終わり、過去の村山内閣の誕生→社会党/社民党の衰退→絶滅危惧種化の道を歩くことにも成りかねない。
そうすれば、官僚とべったりの人達も多くいる自民党の長期政権が続くことになる。
そして冒頭に書いたように、「政治家は政治主導といいながら、実際には官僚の手のひらで踊っている」時代がまた続くことになり、官僚たちの笑いは止まらないことになるだけだ。
何時も言う事だが、民主党は今の情勢に浮かれずに、天下を取った後のベテラン揃いの自民党の猛攻撃に耐え得るような、実行可能なマニフェストを準備しておくべきだ。
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*注1:国民の意識の反映(官僚)
特に、補助政策中心の農林省、公共事業での地方支援政策中心の国土交通省、日教組対策に全勢力を費やしてきた文部科学技術省などは、特に国民の意識から遊離しやすく、他の政府官庁部内から軽く見られている存在らしい。
*注2:金銭、経営などの経済感覚
政治家も官僚もこれらの感覚がないから、企業が新事業を立ち上る前のように、慎重なフィージビリティー・スタディー(収益性を考えた企業化計画)もせず瀬戸内海に橋を3本も作ったり、批判の多い道路建設をごり押ししたり、何とも知れぬ施設を作り失敗してただ同然だ叩き売ったりすることになる。