普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

米国型市場経済中心主義は万能か

2008-07-04 12:00:37 | 企業経営

 昨夜のテレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」でタクシーの数激増に伴い低賃金で働く運転手の問題などについての新たな規制の動きを伝えていた。

[小泉改革以来の日本の変化]
 小泉改革以来日本は大きな変化をしてきた。
大規模小売店舗立地法
により都市部のシャッター街の続出。
外国人研修制度
を悪用した中小企業の輩出
 中でも超優良企業とされるトヨタ自動車のお膝元の愛知県での摘発件数が最も多いそうだ。
改正労働者派遣法 
実施に伴う労働者の賃金の低下、賃金や社会格差の発生→派遣労働者の待遇改善の動き
 中でも象徴的なのは経団連を率いる御手洗冨士夫さんが会長を勤めるキヤノンでの偽装請け負いの疑惑だ。
・農村の振興のために大規模農業に助成金を出し、その他については助成金カット→農村の疲弊→自民、民主のばら蒔き政策
・地方の行政機関による談合取り締まりの強化→小さなパイを奪い合う中小企業の競争の激化→単発的な受注と従業員の給料カット→生活保護所帯に劣る収入
と言うように地方の人達を護るべき立場の地方の行政機関がこのような人々を生み出している。

[改革の基本的な考え方と現実]
 これらの改革の基本的な考え方には、経営者、従業員、農村の人々は皆、元気で、善良で、やる気があり、賢くて自分の行く先への判断力がある、などなどの前提に立っている。
 だから、それらの人達は仮に競争に負けても、別の機会や場所で立ち直り、また新たな挑戦をするので社会が活性化し、国民はそれにより大きな利便を得るという考え方だ。
 それで竹中平蔵さんが今でも言う様に、社会格差が出るのは当然だという発言になる。
・タクシー業者は転身を考えずに生き残りのために成果の見えない戦いを続けている。
・一般企業の経営者で根っからの悪党は別として、中には企業の生き残りを優先して、法すれすれの運営をし、ついその度を越して偽造などの法に触れる運営をする人も出てくる。
・従業員も何もタクシーや低賃金の派遣労働にしがみつかなくても転身先がありそうなものだが、そこも低賃金なので行き詰まり状態になっている。(先のタクシー問題でコメントした人も同じことを言っていた。)
・彼らは金中心の価値観を切り換えて人員不足に悩む、例えば農村や介護施設などで生き甲斐を求めて働けば良いと思うのだが、価値観の切り換えなどの大きな決心も付かない人が大部分だ。
・農村の人達には高齢や、棚田などの理由で大規模農業を目指す政府の施策について行けない人達も多い。
・シャッター街化した商店街の人達も、一国一城の良き日のことが未だ忘れられず、国の施策が悪いとか、行政機関の援助が足りないと言う人達も多いような気がする。
 多くの人達は善良だが、中には高齢で働きたくても働けない人、新しい事に挑戦するより地道でこつこつと仕事をするのに向いた人達、また慎重で今の仕事を切り換えられない人達も多い。(小泉改革については*注1参照)
 そんな厳しい競争を国民に強いている一方で、西欧諸国では何処でも行われている10数%の消費税を僅か5%に抑えている。
 これで競争に就いて行けない人達に福祉厚生予算を廻そうというのは無理な話だ。

[日本と西欧諸国]
 市場経済中心主義の基本的な考え方の、企業も人も競争させることで経済の活性化を図ると言うのは、狩猟民族である西欧諸国の考え方で、建国以来の共同生活で助け合いをしてきた農耕民族である日本人とは相容れないやり方だ。
 まして、白人国家建設のために土着の人達を駆逐し、労働力として黒人奴隷を使用して発展した米国とは全く成り立ちが異なっている。

 最近の情勢を見ると、環境問題、原油価格の高騰に関して先物市場の規制などに腰が引けた米国と、それを推進する立場の英国を除く西欧諸国、逆にイラク問題では強硬な米国と英国に比して、批判的な英国を除くEUと見て来ると、日本人の心情としては、米国の国民より西欧諸国の人達の心情に近いような気がする。
 そう言えば、割合に狭い国土、それに伴う日本と似た経済環境、長い国の歴史など日本と似た環境を西欧諸国が持っている。
 私は前にも書いたが、日本はここらで米国一辺倒から、少し車間距離を置き、その分だけアジアとEUに少し軸足を移したらどうだろうか。
  そして、EUと協力して、環境破壊を考慮した、そして投機資金などの横行を防ぐ、持続可能な節度ある新型の市場経済システムを確立してはどうだろうか。
 何度も書くが米国がポシャッタ時(ローマ帝国ではないが何時かは来る)、日本が孤立してしまわない様、アジア諸国と共にEUとの関係強化も考えた方が良いのではないだろか。

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*注1:小泉改革の弁護
 小泉改革について弁護すれば、いや弁護にもならないかも知れないが、改革当初は各種の規制緩和や経費削減の一方で、保育所や老人ホームの拡充などで、弱者の救済をし、併せて労働の機会を増進しようと言う話が良く新聞紙上に出ていた。
 結果はやる気満々の竹中さんや猪瀬さんばかりが頑張って改革は進んだが、改革に伴う救済に当たる厚労省や人材を育成する文科省など各省は旧態依然のままで、規制改革ばかりが独走する形になってしまった。
 それでやっと今になって、タクシーの規制や派遣労働法の見直しを行われている。
 ただ政府、与党にとって気の毒なのは中国の台頭による企業の競争力の相対的低下の問題が改革の実施に併せて起こり、ことをより難しくしてしまった事だ。

参照:
小泉改革
   小泉改革とは何だったか
 小泉さんのやったこととこれから
 小泉さんがやってきたこと、またはし残したこと事 

米国との関係
 中東紛争から学んだもの(1)米国の民主主義とは
 その場凌ぎの政治から抜け出すために
 米国がもし~したら、~しなかったら
 
  米国との関係の見直し
 米国は日本を護ってくれない?
 石油問題と米国との関係の見直し