このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。
私が長年通っている日舞の会は、師匠のお父様、夫君が二代続いてTH大工学部の教授を務められており、三代続く国会議員Iさんのお嬢さんも在籍していることから、他の会から一目置かれていた。
「お弟子さんたちはハイソな方々ばかりでしょ?いろいろ大変ね」とよく言われるが、それは誤解で、私のような普通のOLでも快く入れていただいてのびのびとお稽古に励むことができていたし、姉弟子もみな揃って気さくな奥様方だった。
もちろん、何かと物入りなのは確かだ。
名取になってからは特に、お給料のほとんどを月謝や観劇代などに費やしていた。
でも、それくらい私は日舞が好きだった。
遠方への転勤で会を離れている一番弟子の方が久しぶりに浴衣会のお稽古を見学にいらした。
とても可愛がっていただいた姉弟子だったので、私は隣に座ってあれこれ話しかけた。
真千園さん(私たちはお互い芸名で呼び合うのだ)、あちらでは踊ってらっしゃるのですか?
ううん。私はこの藤園会ですべてを学んだの。
だから、別のお師匠さんについてまで踊ろうとは思わない。
この会も、みんなも、大好きだったから。
なんだか違うなって思えて。
いつもは広いお稽古場の上座に厳然と着座している高齢の師匠が、ハンカチを取り出した。
―お姉さんたら、お師匠さんを泣かせて。
たぶん師匠も心の奥ではそれを望んでいたのだろう。
本当に師匠孝行な姉弟子だ。
かく言う私も彼女同様に、この会を心から誇りに思っている。
私もきっとそうするだろう。