アルバムのヒットを反映して、ソフィーのツアー会場はどこも大盛況だった。
気をよくした彼女は、きびきびとしたステージアクションを見せてくれた。
エドは彼女のかつての大ヒット曲をアレンジし直してエンディングやアンコールに置いた。
それがまた観客にはウケた。
会場は次第に大きくなり、野外フェスティバルの大トリに呼ばれることすらあった。
そのうちに何かが変化し出した。
メンバーはソフィーのバックバンド扱いになり、彼女の夫のリッチがあれこれ口を出すようになっていた。
ソフィーの成功を導いたエドにはプロデュースの話がいくつか届いており、潮時かも、と感じた彼は自分のレコーディングをも理由にしてツアーを降りると宣言した。
彼の後任は、リッチのバンドのキーボーディストが務めることにほどなく決まった。
妻のジータはそのままバンドに帯同したが、時々ホテルからソフィー夫妻の専横ぶりへの泣き言をメールで知らせてきた。
ツアーは遠くロシアやポーランドにまで及んだ。
妻からはBBCでソフィーが番組まるごと生で歌う企画が近々収録されると聞いたが、結局彼には声がかからなかった。
放送日当日、迷いながらもエドはソファに座ってテレビを点けた。
ハイヒールでステージ狭しと歌い踊るソフィーは相変わらず素敵だった。
そして曲は確かに自分が書いたものだ。
エドはテレビを消すと画面に向かって古い映画のセリフをつぶやいた、
「イライザ、僕のいまいましいスリッパはどこだい?」
(おわり)
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
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