株式会社町田サービスの社長さんが、なごやか理事長の元を訪ねてきた。
かつては抜きつ抜かれつの熾烈な競争を展開していた二人だったが、それもひと段落して近年は落ち着いた関係になっているらしい。
町田社長の目下の頭痛の種は、起業するためと昨年末に退職した元管理者の動向だった。物静かな社長にしては珍しく、「後ろ足で砂をかけて行った」という表現を使った。
後任の管理者からも辞表が出ており、どうやら彼のところへ行くらしい、その他の引き抜きの気配はまだないものの、自分よりまわり(職員)が心配しているし、あちらが本当に人手が集まらなくてどうにもならなくなったら仕掛けてくるだろう、と感じている、とのことだった。
これまでの元管理者との関係を振り返り、ずいぶんと勤務形態や勤務時間等に関して便宜を図ったし、彼が熱を入れている職務外の活動についても、会社のためになればと思って目をつぶってきたけれど、途中から違和感が大きくなって、気をつけていたとも語っていた。
理事長は言った、自分はそりが合わなかった初代の管理者と三年でたもとを分かち、ちょうどそのタイミングで幸運にも一騎当千の職員に出会って事業所をあるべき姿に戻しているので、早くてよかったな、とお話をお聞きしながら改めて思いました。
特に男はエゴを大きくし過ぎると厄介ですね。
長く一任していただけに今は大変でしょうが、雨降って地固まるです、僕も乗り越えてきたのですから、大丈夫ですよ。
そう理事長は親身に励ました。
町田社長が帰った後、グラスに残ったジュースを飲み干すと理事長はもう一度ポツリと言った、僕は幸運だったな。
こういう時、理事長がどうするか、最近私はわかってきた。
グループホーム虔十のY管理者へ、きまって短いお礼の電話を掛けては、時でもないのにどうしたのですか、と相手にきまり悪がられる、というお約束の形があることを。
大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。
また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。