ミューズの声聞こゆ

なごみと素敵を探して
In search of lovable

このたびの東日本大震災で被災された多くの皆様へ、謹んでお見舞い申し上げます。

大震災直後から、たくさんの支援を全国から賜りましたこと、職員一同心より感謝申し上げます。 また、私たちと共にあって、懸命に復興に取り組んでいらっしゃる関係者の方々に対しても厚く感謝申し上げます。

別れ②

2019年08月22日 | なごやか

 葬儀から戻ったNPO法人なごやか理事長は、私に川井主任と愛子CMを呼ぶよう指示した。

亡くなられたのは理事長が起業してグループホームを立ち上げた初年度の利用者様で、大震災後事情があって退居され、自宅で過ごされていたとのことだった。

 二人が到着すると、理事長はこれまでについてのねぎらいと謝意を述べた。

先に愛子CMが口を開いた。

「野川トチ子様のことは、新聞の訃報欄で目にしていました。

トチ子様は私がグループホームで初めて担当した方で、仕事を覚えていく中で、多々苦戦しながらも一緒に過ごした楽しい日々を思い出します。

ある日の受診時には、トチ子様が理事長の車、私はホーム活動車で帰園するという今では笑えるエピソードも、昨日のことのように感じられます。

素っ気ない態度や、たまに見せるニヤリとした笑顔など、懐かしい思い出ばかりです。

亡くなられたことはとても悲しいのですが、故人を思い出すと、ほっこりします。」

川井主任が続いた。

「私も朝刊の訃報欄を見て、驚いていました。あまりにも長い月日が経ちましたが、振り返ってみると、初期の利用者様や同期の職員の顔は、名前も忘れずに今でも覚えています。

今残っている利用者様は清美様だけですね。

野川トチ子様だけでなく、初期の利用者様の居室内の配置、全て鮮明に覚えています。

誕生日会も忘れません。古いメンバーでしか語れないトチ子様のエピソードも沢山あります。思い出深いですね。

 私が入社した頃は、グループホームの在り方さえ分からず戸惑いもありましたが、利用者様から学ぶ事が沢山ありました。

その時は、職員間や利用者様の対応も含め、悩むことはありましたが、今は客観的に周囲を見ることができている自分がいます。」

「そうか、それは成長だね。

真面目でガンコなきみがホームの現状を憂いて、新しく管理者に着任したばかりのミス・エイスワンダーへ涙ながらに訴えた時のことは、忘れられないよ。

あの方も、相当面食らったことだろう。とんでもないところへ来てしまった、と内心後悔されたかもしれない。

実際、あのあと僕は時々彼女へ謝った。

でもね、あれがあったからこそ、僕も、彼女も、きみたちも、いいホームにしようと精魂を傾け、力を尽くし、今があるのだと思う。本当にありがとう。」

コメント
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