稽古とは 一より習ひ 十を知り
十よりかへる 元のその一
千利休
訳 : 稽古というものは、初めて一から習う時と、十まで習って元の一に
戻り、再び一を習う時とでは、人の心は全く変わっているものだ。
だから十まで習ったからといって、これでよいと思った者の進歩は
それで止まり、その奥意をつかむことはできない。
1966年8月のアメリカツアーを最後にビートルズはコンサート活動を休止する。
巨大化し、マンネリ化したツアー疲れと、ライブで再現するにはその楽曲が複雑になり過ぎたというのが理由だった。
それでも彼らの人気は衰えず、レコードセールスは伸びる一方だったが、しばらくしてポール・マッカートニーはジョン・レノンへコンサートの再開をしきりに提案する。
またデビュー前のように小さなホールで演奏しよう、と。
レノンは首を縦には振らなかった。
こうしてすべてを手に入れ悠々自適の生活ができるようになった今、なぜそんなことをしなくちゃいけないんだ。
結局ビートルズは映画「レット・イット・ビー」用にアップル社屋上でのライブを行なっただけで解散する。
その後レノンは散発的にチャリティライブを行なっては、緊張のあまり開演前に吐いたり、自分の思うようなクオリティに届かず「リハーサルにようこそ」などと自虐的ジョークを口にしている。
一方ポールはソロデビュー後、素人の妻リンダを含む無名のメンバーとウイングスを結成すると、地方の大学でのアポなしライブから始め、3年かかってトップ・アーティストに返り咲いた。
80年に日本で逮捕されたことがきっかけでバンドが解散すると今度はソロとしてヒット曲を連発、3度目の頂点に立つという、前人未到の偉業を成し遂げている。
どちらの生き方がいいとか悪いとかではない。
一生は一度なのだから、心の求めるとおりに行動するのが大切だ。
日ごろから職員たちには、苦労するだけだから(ポールのような)キャリアパスの逆走はするな、としつこく言っているのだが、すればしたで支援するし、するからには思い切りしなさい、と内心エールを送り続けている。
たぶん、自分自身もそんな性質だからか。