墓地みたい、とママヨさん。羽田から飛び立つ上空から見る東京のビル街は、言われてみればなるほどだ。高さを競う灰色の高層建築群は、ぎっしりと墓石の並ぶ広大な墓地。
飛行機の降り立つ当地は、丘の上に墓標が並ぶ。風力発電の白い風車がキリスト教の十字架に見える。地上では何も感じないことが空からは違って見え驚くのは、普段の暮らしで、離れてみて初めて分かることと同じ。
東京は便利な街なのだろうか?当地で無くなった蕎麦屋もウドン屋も本屋も、リアル店舗のユニクロも無印も美術館も映画館も劇場もある。問題は何でもあって「行こうと思えば行ける」ことで、電車の乗り換え、人込み、暑さは不便中の不便。慣れたら苦にならないだろうが、老いるほど難しい暮らし方。生まれてこの方欲しいものは歩いた先にたいてい売っていた。無ければ我慢するか断念した。東京で暮らしている人々に心から感心する。同じ消費的生活でも東京人のようには生きられないなあ。
カツサンドを食べたいとママヨさん。昼用の空弁を買った後に。「飛行機ではカツサンドなんです」とキッパリ主張(笑)。水気の無いパンに温かくないカツを挟んで何が美味しいのだろうと思ったが、「でしょう?」「本当だ!」だった。1箱4切れを分けあい、「もう少し食べたいなあ」ぐらいが老人にちょうど良い。カツサンドが唯一普段と違うこと、そんな東京旅行だった。
電車でスマホ画面に見入る東京人にも違和感。波風氏も電車乗り換えでは使ったが、仕事と寝ている時以外はスマホ世界の住民になっている 文庫の山口瞳エッセーを旅行中読んでいた。30年ほど前に亡くなった小説家、偏見とズケズケと粋をほどよく調合した昭和の文化人男性、絵を描き競馬好き。暮らしの感性や情緒を洒落た1枚の絵のように言葉に変換している。再評価されてしかるべし読書交流会『ほんのおつきあい』を6月25日(日)14:00~3年ぶりに波風食堂で開催します。感想聞くだけもOK、参加費200円。