吉村昭著『海の祭礼』を読んで、昔、高校の同級生が英語担当のG先生に「なぜ英語を学ぶのか」と問うたときのことを思い出した。
そのとき、先生はこんな話をしてくれた。太平洋戦争の末期に、勤労動員で飛行場の爆撃後の整地作業に従事していた。1回の爆撃で穴ぼこだらけになった飛行場で、もっこをかついで土を運び、何日も何週間もかかって穴ぼこを埋める。空腹と空しさを感じるだけの毎日の中で、ふと「アメリカってどんな国なんだろう」と思ったそうだ。だけど、そんなことを口にすると殴られるので黙っていたが、ある日玉音放送の後に進駐軍がやってきて、ブルドーザとかいうでかい機械を用い、穴ぼこだらけの飛行場を二日できれいに整地してしまったそうだ。ブルドーザというものを初めて見て、「こんな国と戦争をして、勝てるわけがない」と思ったそうな。そのとき、アメリカという国のことを知りたいと痛切に思った、ということだった。
私たち教え子たちは、「なぜ英語を学ぶのか」という問いに理路整然とした解答を得たわけではなかったが、「学ぼうとする強い意思」の大切さは強く感じ取ることができたように思う。
『海の祭礼』の物語で、オランダ語を身につけた森山栄之助が、あらためて英語を学ぼうとするくだりで、こんな昔話を思い出した。
そのとき、先生はこんな話をしてくれた。太平洋戦争の末期に、勤労動員で飛行場の爆撃後の整地作業に従事していた。1回の爆撃で穴ぼこだらけになった飛行場で、もっこをかついで土を運び、何日も何週間もかかって穴ぼこを埋める。空腹と空しさを感じるだけの毎日の中で、ふと「アメリカってどんな国なんだろう」と思ったそうだ。だけど、そんなことを口にすると殴られるので黙っていたが、ある日玉音放送の後に進駐軍がやってきて、ブルドーザとかいうでかい機械を用い、穴ぼこだらけの飛行場を二日できれいに整地してしまったそうだ。ブルドーザというものを初めて見て、「こんな国と戦争をして、勝てるわけがない」と思ったそうな。そのとき、アメリカという国のことを知りたいと痛切に思った、ということだった。
私たち教え子たちは、「なぜ英語を学ぶのか」という問いに理路整然とした解答を得たわけではなかったが、「学ぼうとする強い意思」の大切さは強く感じ取ることができたように思う。
『海の祭礼』の物語で、オランダ語を身につけた森山栄之助が、あらためて英語を学ぼうとするくだりで、こんな昔話を思い出した。