電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形交響楽団第162回定期演奏会

2005年02月19日 23時11分06秒 | -オーケストラ
週末の夜、山形テルサ・ホールで、山形交響楽団の第162回定期演奏会を聞いた。曲目は、
(1)レスピーギ 「リュートのための古代舞曲とアリア」第3組曲
(2)ロドリーゴ「アランフェス協奏曲」村治佳織(Guit.)
(3)メンデルスゾーン 交響曲第4番「イタリア」
山響は、1980年代の苦闘の時期にも素晴らしい弦楽セクションを持っていたが、黒岩英臣さんの指揮で、現在のもてる実力を遺憾なく発揮した。
指揮者のプレトークのあと、緊張感のあるレスピーギで幕をあけ、リズム感抜群の村治佳織さんのギター独奏でロドリーゴのアランフェス協奏曲。赤とピンクのスペイン風のドレスが鮮やかで、素晴らしいギター演奏を堪能した。と同時に、この有名な協奏曲が、ギターとオーケストラとの音量のバランスについて、実によく考えられた曲だということ、激しくかき鳴らされればされるほど、オーケストラが活躍する合間をぬってギタリストは調弦に余念がないこと、やわらかいギターの音色はサウンドホール付近で弾き、とがった音色はサウンドホールから離れたところを弾くなど多彩な表現を駆使していることなど、実によくわかった。
ここまでは、どちらかといえば求心的な、緊張感のある曲目だったが、休憩後のメンデルスゾーンの演奏は、管楽器セクションも大活躍し、明るく情熱的で、躍動する幸福な音楽となっていて、本当に素晴らしかった。「イタリア」は大好きな曲だけに、もう大満足。
さらに、アンコールのチャイコフスキー「弦楽セレナード」から「悲歌」では、ホール内が完全に無音になる瞬間が何度もあり、曲が終わってしまうのが惜しまれるひとときだった。
帰路、みぞれの降る中で、ロドリーゴやメンデルスゾーンを口ずさみながら、車を走らせた。
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「面白い作品」と「好きな作家」

2005年02月19日 10時52分57秒 | 読書
週末の朝、子どもを駅まで送り、コーヒーを飲む。先日来文春文庫で再読している宮城谷昌光の『太公望』の下巻を一気に読んだ。作者は商の受王を、残虐ではあっても英明な君主であったと位置づけ、箕子の行政政策を実行し国を富ましたとするが、そうだろうか。私は人間は多くの失敗や困難を通じて学ぶものだと思っている。実効性のある政策は時代の流れの中で多くの経験と知恵が組織されてできあがるものだろう。健やかに育った天才的な君主が、無から独創的な政策を考え付くわけではない。業績を英明な君主に帰すのは、象徴的な意味合いにすぎないだろう。私は、受王はやっぱり残虐な性向を持った暴君だと思う。

今日の朝日新聞土曜版beでは、小説をテーマに取り上げている。興味深いのは、「最近読んで最も面白かった小説」の作者と「最も好きな小説家」が必ずしも一致していないことだ。「最近いいなぁと思った歌」と「一番好きな歌い手」が一致しないことと同じなのだろうが、「好きな小説家」というのは肌合が合うか合わないかが大切なのだろう。私の場合、最近読んで面白かった作品には気宇の大きな宮城谷作品のいくつかがあがるだろう。そして、好きな小説家といえば、吉村昭とか藤沢周平などの名前があがる。君主の目で見た大きな流れは確かに面白いが、大軍の激突の影で逃げまどう庶民の運命こそ自分達の姿だ、という描きかたの方にリアリティを感じるからかもしれない。
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