電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ジャレド・ダイアモンド『文明崩壊』上巻を読む

2010年05月20日 06時02分26秒 | -ノンフィクション
先に触れておりました(*1)、ジャレド・ダイアモンド著『文明崩壊』上巻を読みました。プロローグと第1部「現代のモンタナ」は先述のとおりですが、上巻は第2部「過去の社会」がつぎのように描かれます。

第2部 過去の社会
-第2章 イースター島に黄昏が訪れるとき
-第3章 最後に生き残った人々ーピトケアン島とヘンダーソン島
-第4章 古の人々ーアナサジ族とその隣人たち
-第5章 マヤの崩壊
-第6章 ヴァイキングの序曲と遁走曲
-第7章 ノルウェー領グリーンランドの開花
-第8章 ノルウェー領グリーンランドの終焉

森林の破壊により土壌侵蝕が起こります。養分の枯渇と溶脱によって食料生産が深刻な事態となり、孤島で木材の枯渇が起こるとカヌーも作れず漁も不可能となります。地理的環境要因と人口密度から、森林の再生は難しいとなると、ここからは急激な社会崩壊、深刻な内部闘争、人口の急減が起こります。かつて首長たちが競って建立したモアイは、打ち捨てられるだけではなく、引き倒されます。

花粉分析、氷柱分析、放射性同位体による年代決定、年輪分析など、多くの手法を用いて明かになる事実が物語るものは、多くの文明の崩壊の過程に、ひどく似ている面がある、ということ。

そういえば、昔、高校の世界史で世界の四大文明について習ったとき、どの文明も荒廃した荒地にあることに気づきました。よりによって、どうしてこんな荒地に、墓や建物などを作ったのだろうと不思議でしたが、あるとき新聞を見てはたと気づきました。「サハラ砂漠はむかし緑の草原だった」というのです。それならば、きっと四大文明もまた緑の大地に成立していたにちがいない。たぶん、緑の大地が荒涼たる土地になってしまったから、文明は滅んだのだろう、と。

また別の本で、シリアの岩山地帯の花粉分析から、かつては一帯がレバノン杉におおわれていたこと、レバノン杉の過剰な伐採が文明の崩壊の一因であることなどを知りました。本書は、文明と環境要因、とくに森林の価値について、示唆に富む内容ですが、それだけではなく、さらに様々な要因を加えて分析しています。たいへん興味深い内容です。

(*1):ジャレド・ダイアモンド『文明崩壊』上巻を読んでいます~「電網郊外散歩道」
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