電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

藤沢周平記念館がオープン!

2010年05月02日 05時52分10秒 | -藤沢周平
この四月に、山形県鶴岡市に藤沢周平記念館がオープンしました。藤沢周平の少年時代には図書館として使われていた、旧鶴岡公園管理事務所の建物を取り込み、新たに設計された記念館は、満開の桜の下に、親しみ深く建っていました。

入り口を入るとすぐに受付があり、常設展示の第一部は「藤沢文学と鶴岡・庄内」がテーマになっています。様々なイメージ写真を眺めながら進むと、全単行本を展示した壁面を経て、直筆原稿や創作メモなどの資料をまじえ作品をジャンル別に解説する、第二部「藤沢文学のすべて」のコーナーとなります。中央には、本来は6畳間だそうですが4畳半に奥行きをつめた自宅書斎の移築再現を見ることができます。
さらに第三部では、「作家・藤沢周平の軌跡」として、故郷の人々や教え子たちとの交流、作家になるまでの道のり、日々の暮らしなどが紹介されます。
開館記念の特別企画展として、11月28日(日)までは「『蝉しぐれ』の世界」が特集され、直筆原稿や創作メモ、海坂藩のモデルとなった荘内藩の郷土資料や映画撮影の様子なども展示されています。



直筆原稿を見ていて、あらためて気づいたのは、直木賞を受賞した「暗殺の年輪」の当初の題名が「手」というものだった、ということ。原稿用紙には、「手」が「暗殺の年輪」に改題されております。娘さんの文章の中にもこのことに触れたものがありますが、担当の編集者が「『手』ではちょっとね~」と言ったことがきっかけらしい。で、藤沢周平らしくじっくりと考えて、「暗殺の年輪」という題名を考え出した、ということなのでしょう。『用心棒日月抄』も、当初は「用心棒歳月抄」だったのを、やはり改題したようです。そんな経緯が明確にわかるのも、記念館の展示の価値でしょう。

展示室を出ると資料の検索ができる部屋もあり、ここでは生前のインタビューの映像なども見ることができるようになっています。館の図録は1200円。内容も、なかなか読み応えがあります。



ただし、鶴岡公園の中ですので、付属の駐車場は身障者用の一台分のみとなっています。車でお出かけの方は、館のホームページ(*)に周辺案内図のPDFファイルがありますので、開館時間等も含め、あらかじめ調べて行った方がよいでしょう。



当方、藤沢周平氏が存命の頃に鶴岡市民でしたので、その後かなり変貌しているとはいえ、基本的に変わらない市街地の地理にはピピッと勘が働きます。細い路地も頭に入っており、この辺は少しも変わりません。木村屋の古鏡や富樫ろうそく店の絵ろうそくなど、お土産の定番も相変わらずです。鶴岡は古くて新しい、実にいい街(*2)です。



隣接する旧市立図書館「大寳館」の桜は、さすがに花吹雪が始まっておりました。



(*):鶴岡市立藤沢周平記念館
(*2):松田静子・本間安子他『海坂藩遥かなり~藤沢周平こころの故郷』を読む~「電網郊外散歩道」2009年8月の記事
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