電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

佐伯泰英『更衣ノ鷹(上)~居眠り磐音江戸双紙(31)』を読む

2010年05月26日 05時52分09秒 | -佐伯泰英
双葉文庫で、佐伯泰英著『更衣ノ鷹~居眠り磐音江戸双紙(31)』を読みました。だいぶ前に購入して一度読んでおりましたが、最新刊に少しばかり遠慮しておりました。どうやら、第33巻『孤愁ノ春』も発売されたようですし、そろそろ良いかな、と思った次第です。

第1章「お告げ」。槍折れと称する棒術の達人、小田平助を伴い、鵜飼百助の屋敷に愛刀・包平を研ぎに出した磐音は、小田平助の人柄と実力をあらためて実感します。丸目歌女という妖術使いが田沼一味の意図を明確に示しますが、田沼たちのほうが組織的な動きは一枚上手です。羽根村金次郎という入門希望者が、なにやら意味深です。
第2章「辰平、福岡入り」。諸国武者修行中の松平辰平、福岡到着早々に、廻船問屋玄海屋に押し入った泥棒退治です。福岡藩黒田家の藩道場で実力を見せ、修行を許されます。いっぽう江戸では、羽根村金次郎が入門を許され、長屋に住み込むことになります。桂川国端さんの方は、桜子さんの懐妊のうれしさの反面、西の丸御典医を解任され、世嗣家基の周囲を田沼派で固める包囲網が出来つつありました。弥助からの情報では、家基が鷹狩りに出かけるとのこと、緊迫の度合いは日々増しつつあるようです。
第3章「二の江村の放鷹」。家基のお忍びに付き添う役目は何度目でしょう。日光、宮戸川鰻遠足、今度の鷹狩りで3度めかな?鷹のほうは覚えていたようで、うちのアホ猫よりよほど記憶力が良いようです。家基さん、今回は大事無く何よりでした。
第4章「虚々実々」。松平辰平は、福岡藩道場の東西勝ち抜き戦に活躍、道場仲間とともに、箱崎屋の三女お杏に招かれます。このへんは、悲劇に向かう物語に明るさを添えるエピソードでしょうか。一方、江戸では羽根村金次郎への疑惑が深まります。自らの力を秘匿しようとする意図に気づかれたと焦ったか、突然長屋から姿を消しますが、同時におこんさんも行方不明に。ヒロインが攫われる話は、紙芝居では常套手段でしたけどね~。
第5章「神田橋のお部屋様」。娘の行方不明を知った父親の対応、田沼意次の愛妾おすなの出自と経歴、羽根村を出し抜いた小田平助の知恵、おこん救出大作戦のてんまつが描かれる章です。・・・・って、何も言ってないようでいて実はあらかた予想がついてしまう書き方だなぁ(^o^)/

世嗣家基の運命は史実が示すとおりですが、そこへ至る道のりが一方の側からのみ描かれ、田沼意次一派の実際の動きが表されない分だけ、不気味かつ受身の展開になってしまいます。下巻につづく。
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