電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

デュマ『モンテ・クリスト伯』における人物相関図を描いてみる

2013年03月15日 06時04分37秒 | -外国文学
佐藤賢一さんが解説をつとめた、NHK-Eテレ「100分de名著」で『モンテ・クリスト伯』を取り上げたのを機会に、登場する人物相関図を作ってみました。すでに何度も読んでいますので、およそのところはささっと出来上がりましたが、実際に図解してみて、その入り組んだ関係に、あらためて目をみはりました。
佐藤賢一さんが注目する、エドモン・ダンテスVSヴィルフォールの複雑な対立や、作家の安部譲司さんが指摘する、「メルセデスの気持ちは書かれていない」ことなど、今回の放送で再確認させられたことも少なくありませんでした。

ところで、メルセデスが従兄弟のフェルナンと結婚してしまうことについて、現代人の感覚で批判はできないのでは、と思います。当時、メルセデスは貧しく不幸な境遇にあり、ダンテスの父親の世話をしながら二年間も待ち続けたことは、最大限に評価して良いのではと思います。
もちろん、ダンテスがアルベールを殺そうとした理由に、自分を裏切り、こともあろうに仇の一人のフェルナンとの間に子供までもうけていることへの怒りがあったことは否定できないでしょう。ですが、少なくともメルセデスは、主要な復讐の相手ではなかったはずです。
むしろ、フェルナンへの復讐ではメルセデスとアルベールの幸福を奪い、ヴィルフォールへの復讐ではエロイーズとエドゥワールなど多くの人の命を奪う結果となりました。復讐にともなう犠牲を、神ならぬ身が引き受けられるのか?復讐の後の生と希望を見出すことができるのか?そういう内面の葛藤が、モンテ・クリスト伯の胸中に生まれるところに、後半のドラマの深まりがあるようです。
実質は四分の三ほどしか観ることはできませんでしたが、NHK-Eテレ「100分de名著」、なかなかおもしろく、楽しむことができました。

この放送の影響でしょうか、当「電網郊外散歩道」を、「モンテ・クリスト伯 結末」などの語で検索する方が激増しました。今はようやく落ち着きましたが、これだけの反響のある名作が、岩波文庫だのみというのは、なんとも残念です。例えば集英社の世界名作全集の松下訳など、なんとか文庫化してもらえないものかと願っています。

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