電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形交響楽団第277回定期演奏会でメンデルスゾーン、シューマン、ブラームスを聴く(2)

2019年05月13日 20時04分23秒 | -オーケストラ
昨日の記事の続きです。
休憩の後は、ブラームスのピアノ協奏曲第1番です。例によって、楽器編成は 8-7-5-5-3 の弦楽五部に、Fl(2),Ob(2),Cl(2),Fg(2),Hrn(4),Tp(2),Timp. というものです。第1楽章:マエストーソ。ゆっくりめのテンポで、底流にしっかりリズムが刻まれますが、どちらかといえばレガートな美しさを重視したものでしょうか。それにしてもピアノが素晴らしい! 横山幸雄さんのピアノに触発されたのか、オーケストラも、例えばピアノソロから木管に移るところのオーボエの見事さは内心思わずブラボーでしたし、ピアノが休んでいる間のオーケストラの優しい響きは、山響の美質を感じました。第2楽章:アダージョも、ゆったりしたテンポでしみじみと聴かせます。沈潜するピアノが、荒れた気持ちを鎮めていくようです。そして第3楽章:ロンド、アレグロ・ノン・トロッポ。ん?もしかしたらトランペットはナチュラル・タイプを使用していたのでしょうか。音楽が再び決然と動き出します。ピアノが、ほんとに見事! これに応える山響も、堂々たるものです。青年ブラームスというよりは、自信に満ち、充実した大人のブラームスというべきでしょうか。



ところで、シューマンが生きた19世紀前半〜中頃、ロマン派の時代というのは、実は楽器の進歩が著しかった時代なのかもしれません。産業革命が進み、鋼鉄のフレームを持つピアノが誕生しますし、金管楽器のバルブシステムなども進歩します。山響が本演奏会で採用している楽器も、そうした楽器の時代的な変化を反映させているのかもしれません。今回の演奏会でいえば、ブラームスのピアノの低弦の響きが、モーツァルトやハイドンの時代のピアノとはかけ離れたものと感じますし、リストが登場するヴィルトゥオーゾの時代を象徴するかのような力強さ・迫力があります。溶鉱炉が高温の銑鉄を吐き出し、蒸気の力で鋼鉄の機関車が走る時代にふさわしく、ピアノもまた低弦の圧倒的な響きを聴かせるようになったのでしょう。

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