いよいよ、新型コロナウィルスに対応したワクチンの接種が始まるようです。ファイザー社とモデルナ社のワクチンは、mRNAワクチン(*1)のようですが、通常十年以上かかると言われるのにこのワクチンの開発は驚異的に早かったため、「ほんとに大丈夫なのか」と不安が出ているのかもしれません。ではこの「mRNAワクチン」の開発は、誰が、いつ頃、どんなふうに行ったのか。
研究の歴史的概要は、Wikipedia の記事等にまとめられているようですが、要点だけを大雑把にまとめると、こんなふうになるようです。
ふむふむ、なるほど。要するに、一朝一夕にできたワクチンではなく、長い下積みの研究の歴史があり、たまたま今回クローズアップされたに過ぎない、ということなのだな。それこそ、科学の基礎研究の重要性(*2)を実証したようなものでしょう。なんとなく、パンデミックが落ち着いた頃にはノーベル賞かも、と思いました。
女性が入ると会議が長くなるとか言った人もいたようですが、この女性科学者の努力の前には自然に頭が下がるのが本当なのではなかろうか。
(*1):mRNAワクチンの原理とリポソームの記憶〜「電網郊外散歩道」2021年1月
(*2):多様な基礎研究の厚みがいざというときに役立つものではなかろうか〜「電網郊外散歩道」2020年2月
研究の歴史的概要は、Wikipedia の記事等にまとめられているようですが、要点だけを大雑把にまとめると、こんなふうになるようです。
- ハンガリー人の生化学者カリコー・カタリン博士(1955年生まれ、65歳、女性)は、約40年前からRNA研究に取り組み、mRNA研究の臨床応用を目指して渡米、テンプル大学、ペンシルベニア大学に籍を置きます。遺伝病ではない、ガンや感染症などの通常の病気はDNA改変までは必要とせず一時的に効果があればよいのだから、目指すmRNAを与えてやれば治療できるはずだ、というアイデアでした。
- しかし、mRNAの直接投与は、免疫反応により重篤な炎症を引き起こすという欠点をもっていました。これに対して、コピー機の前で雑談をした同僚のドリュー・ワイスマン博士とともに「暗号に用いられる塩基ウラシル(U)とリボース環の間のグリコシド結合が N-C の代わりに C-C に置き換わった修飾ヌクレオシドであるシュードウリジンを用いる」ことで免疫反応を抑制できることを発見(2005年)、特許を取得します。
- ペンシルベニア大学はこの業績を評価せず、文系研究者を厚遇し外部から資金を得やすい医・理系研究者は減給としたため、カリコー博士は研究の将来を開くために、特許技術を評価したドイツの製薬ベンチャー企業 BioNTech 社に就職します。(現在は上級副社長らしい。)
- BioNTech 社は、脂質の膜で mRNA を保護することで不安定な mRNA を守るとともに細胞膜を通過できるナノミセルとして投与する新型コロナウィルスワクチンを開発し、高い製造能力を持つファイザー社と提携します。修飾された(mode)RNAの語を社名の由来に持つモデルナ社のワクチンもまた、カリコー博士の研究に基礎をおくものです。
- mRNAは正しい遺伝情報があれば作ることができるため、新型コロナウィルスの全遺伝情報が解析され、公開されていたことがワクチン開発の根底にあります。このことは、政治体制や企業の思惑などを超えた、科学研究とその公開のシステムの意義と重要性を示すものでしょう。
ふむふむ、なるほど。要するに、一朝一夕にできたワクチンではなく、長い下積みの研究の歴史があり、たまたま今回クローズアップされたに過ぎない、ということなのだな。それこそ、科学の基礎研究の重要性(*2)を実証したようなものでしょう。なんとなく、パンデミックが落ち着いた頃にはノーベル賞かも、と思いました。
女性が入ると会議が長くなるとか言った人もいたようですが、この女性科学者の努力の前には自然に頭が下がるのが本当なのではなかろうか。
(*1):mRNAワクチンの原理とリポソームの記憶〜「電網郊外散歩道」2021年1月
(*2):多様な基礎研究の厚みがいざというときに役立つものではなかろうか〜「電網郊外散歩道」2020年2月
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