電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

坂本敏夫『典獄と934人のメロス』を読む(2)

2016年03月16日 06時04分46秒 | 読書
著者が、関東大震災下の横浜刑務所における囚人の一時解放と帰還、被災者救援の活動などを知るきっかけになったのは、無実の罪で収監されていた囚人・神田達也の妹サキを母に持つ女性刑務官との出会いでした。そこで、母サキに何度も聞かされた大震災をめぐる物語と、長年にわたり隠蔽されていた衝撃の史実を知ることになります。



有力者である上司の公金横領・使い込み事件で窃盗犯に仕立てられてしまった福田達也は、容疑否認のまま起訴され、懲役三年を宣告されます。母親に控訴審の弁護士費用を負担させるわけにはいかないと控訴を断念、服役していたのでした。担当看守の山下は、人の裁きには時に誤りもあろうと、彼の無実を信じ励ましながら仮出獄を目指して指導していたのでした。

一時解放でようやくたどり着いた自宅では母と妹ともに無事でしたが、妹サキの同級生の家では家具が倒れ、同級生の母子が下敷きになっていました。救出はしたものの住める状態ではなく、雨風をしのげる状態にまで片付けるために、サキは兄に助力を乞います。遅参は刑期の延長となることを承知しながら片付けに従事することを承知した兄の身代わりとして、サキは自分が刑務所に行き、手紙を届けることにします。危険な目にも遭いながら、ようやく到着した刑務所で、サキは兄の事情を報告し、担当の山下看守と椎名典獄に手紙を渡します。

一方、元船員の河野和夫は、横浜の火災で言い交わしたなじみの娼妓を喪いますが、港の崩れた桟橋で荷揚げの仕事を見つけます。市内では朝鮮人を襲撃する動きが起こるなど不穏な中で、便所を作るツルハシやスコップ、あるいは食料の調達などに奔走します。椎名典獄を中心とする囚人自治の動きでした。司法省は、横浜刑務所への救援を拒否しますが、千葉刑務所の救援船で一息つくことができます。

救援船は横浜港へ続々と到着しますが、壊れた桟橋で危険な荷揚げ作業に従事する人足が集まりません。河野ら六人の囚人が見事な連携で荷揚げに従事する姿を見た県警察部長は、横浜刑務所の椎名典獄に囚人の協力を依頼します。もちろん、法律上は「違法就労」です。このとき椎名は、生家である椎名家の家訓「南洲翁遺訓」を想起します。そこでは、「小人は己れを利せんと欲し、君子は民を利せんと欲す」とされていました。囚人に鎖も分銅も付けずに構外作業を行うことこそ、更生を目指す真の開放処遇ではないのか、と。

司法省行刑局では、囚人の解放を行った椎名典獄を陥れる目的で、永峯書記官を視察名目で派遣します。永峯は横浜刑務所の不平分子の職員を脅し、デマで扇動し、典獄を孤立させようとします。それは一部成功しますが、姑息な策動は、大災害を眼前にした囚人と刑務官たちを分断することはできませんでした。裁判所の倒壊で妻が圧死した山下看守の傍らに、福田サキはそっと寄り添います。

横浜港での献身的な荷揚げ作業の姿をみて、一般市民の囚人たちを見る目も変わります。県知事の感謝の言葉も嬉しいけれど、名古屋刑務所からの移送の申し出もありがたい。帰還した多数の囚人たちが、裁判所の瓦礫の山を取り除き犠牲者を収容するという惨状を乗り越えた頃、典獄・椎名は、平沼麒一郎司法大臣と面会します。平沼大臣の用件は、日本人による朝鮮人虐殺が国際問題になろうとしていることを憂えて、横浜刑務所の解放囚の仕業ということにしてほしい、というものでした。

おそらく、この場面は著者の想像でしょうが、隠された歴史の裏面にあったのは、おそらくこういうものではなかったか、という推測は、生存当事者の貴重な証言を踏まえて、刑務官としての仕事の中で、長年考えに考え抜いた末の結論かと思います。



しかしながら。

囚人たちが大災害を前にして献身的に働いたこと、この事実は賞賛されるべきことでしょう。それを、典獄が自分の一存で、朝鮮人虐殺の犯人という不名誉な捏造事案に加担して良いのか。立派な典獄の姿とは矛盾するのではないのか。それは、歴史に対して不実であるだけでなく、当の囚人たちの誇りを無にすることになったのではないか? そういう思いを持ってしまうことも事実です。最初の読了後、何度もこのことを考えました。

おそらくは、関東大震災と囚人の一時解放を経験した横浜刑務所の囚人たちにとって、更生と静穏な市井の暮らしの価値は、何ものにも代え難いものであったろうと思います。真実はやがて現れるもの、隠し通すことはできません。人としての名誉はその時に回復されるものであり、当時としては早期の仮出獄釈放への道筋をつけることが大切だ、と考えたのかもしれません。

であるならば、本書はまさに、椎名通蔵と看守たちと934人の囚人メロスたちの真実、歴史における名誉回復の書なのかもしれないと感じました。久しぶりに読んだ、骨のある著作でした。

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坂本敏夫『典獄と934人のメロス』を読む(1)

2016年03月15日 06時01分54秒 | 読書
講談社刊の単行本で、坂本敏夫著『典獄と934人のメロス』を読みました。地元紙で紹介記事(*1)を読んで、すぐに入手した初版第一刷ではありますが、一読して考え込み、再読し、考えがまとまるまでかなりの時間がかかりました。



山形県寒河江出身の典獄(今で言う刑務所長)の椎名通蔵(みちぞう)は、明治43年に東京帝国大学の法科政治学科を卒業し、司法省監獄局の事務官となります。帝大出の監獄官吏第一号でした。その後、文官高等試験に合格し、大正二年に横浜刑務所の典獄として赴任します。着任して五ヶ月が経った9月1日、午前11時50分、大地震が発生、関東大震災です。

正門は崩れ落ち、塀は倒壊、工場も独居舎房もつぶれます。次々に倒壊する独房の扉の鍵を開いて回る看守が骨折し負傷したところを、先に助けられた受刑者たちが布団をかぶせて救い出します。緊急設営された警備本部で情報を集約したところ、横浜地裁に出廷中の者を除いた在所者が集合点呼を受けます。行方不明者は倒壊した建物の下敷きとなったらしく、朝からの強風で横浜市街地は火災に包まれ、なお延焼中です。椎名は非常持出の書類の搬出を支持しますが、隣接する電気局宿舎に火災が発生、二百人もの囚人たちが構外に出て、人命救助と家財の搬出を行います。それは、「刑は応報・報復ではなく教育にあるべきで、その根底には信頼がなければならない」との考えのもとに、犯罪者の処罰よりも犯罪者の更生と国の役に立つ人間に育てることを重視してきた椎名通蔵の信念を裏付ける姿でした。

煉瓦塀は倒壊し、舎房、工場、庁舎等、建物はすべて全半壊の後に焼失、収容人員1,131名のうち死者38名、重軽傷60名、うち重体10名、職員も3名死亡、行方不明3名、重軽傷18名という状況で、周囲の横浜市街地が火災のために、救援が期待できないという状況下では、典獄は24時間の一時解放を行う権限を有するという監獄法第22条に基づき、椎名通蔵は934名の囚人の一時解放を決断します。司法省に連絡を入れるべく、決死の伝令を発すると共に、市街地の警察署にも一時解放を知らせ、無用の混乱を避けるための対策を講じます。

解放された囚人たちが、柿色の囚人服のまま崩れた正門跡から出て行く姿は、映画であればドラマティックな名場面となることでしょう。



ここまでは、典獄の側から見た全体像です。そして第2章は、囚人の側から見た帰還までの被災地での出来事です。

(*1):この本を読みたい~坂本敏夫『典獄と934人のメロス』~「電網郊外散歩道」2016年1月

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音楽が心にしみる時と素通りしていく時

2016年03月14日 06時06分44秒 | 季節と行事
ふだん暮らしていて、音楽が心にしみる時と素通りしてしまう時があるようです。音楽が素通りしていくのは、何か心にとらわれるものがあって、考えがどうしてもそちらに向いてしまうような時でしょうか。そんな時には、むりに音楽を聴こうとしてもしかたがない。お天気が良ければ畑に出て無心に体を動かしたり、美味しいものを食べてゆっくりとお風呂にでも入ってよく寝て気分をほぐしたり、というような気分転換が良いようです。

ここ数日は、確定申告の作業に追われて、音楽が心にしみるところまではいきませんでした。ようやく作業が終了していつものように投函し、ほっと一息。さて、今年もプロに依頼したサクランボの剪定の後始末が残っています。せっせと剪定枝を集め、焼却し、桃とリンゴに取りかからなければなりません。母屋の水回りを中心としたリフォームも順調のようです。お天気を見ながら、作業を進めましょう。

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過去のコメントを確かめたいとき

2016年03月13日 06時05分44秒 | ブログ運営
長年ブログを運営していると、時に過去のコメントを確かめたいときがあります。コメント一覧で探せるうちは良いのですが、当方の11年間のコメント数といったら、7,600件を越えています。この中から、特定の1件を目視で探し出すというのはかなり無理があります。残念ながら、gooブログの場合、本文中の文字列は検索ボックスで探せますが、コメント主の名前やコメント文中の語などは検索できません。では、どうすれば可能か?

これは、gooブログのバックアップ機能を用いて、本文だけでなくコメントも一括してバックアップを取り、この中からテキストデータ検索をすれば、可能です。例えば、

gooブログのバックアップ機能で作成したバックアップ・データは、zip形式の圧縮ファイルとなっています。
■ファイル名: narkejp_gooblog.zip

これを展開すると、narkejp_gooblog.txt というテキストファイルが得られます。このままでは、Shift-JIS コードですので、Linux や Windows8 等の環境では何かと不都合です。そこで、nkf で文字コードを変換してやります。

$ nkf -w8 narkejp_gooblog.txt > narkejp_gooblog_utf8.txt

これで、narkejp_gooblog_utf8.txt という utf8 形式のテキストファイルができましたので、これを検索してやればよいことになります。例えば

$ grep "AUTHOR: ねぼすけ" narkejp_gooblog_utf8.txt

としてやることで、ハンドルネーム「ねぼすけ」さんによるコメントが何件あるかを知ることができました。

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佐伯一麦「Nさんの机で~ものをめぐる文学的自叙伝」が「眼鏡」をとりあげる

2016年03月12日 06時05分39秒 | Weblog
地元紙「山形新聞」に連載中の佐伯一麦「Nさんの机で~ものをめぐる文学的自叙伝」については、これまでも何回か記事にしておりますが、先月24日付けの回は、「眼鏡」をテーマにしておりました。「老眼の今、四つを使い分け」という見出しどおり、佐伯一麦さんの前半生において、視力が損なわれてしまった経緯や、老眼になった今、外出用の遠近両用、PC作業用、テレビや映画用の遠距離用、読書用の近距離用と四種を使い分ける状況を説明しています。「なってみないとわからない」眼鏡事情。若い頃は、両眼とも裸眼で2.0~1.5という幸せな視力を誇った当方も、老眼鏡必須となった現在は、著者の事情がよくわかります。ただし、新聞や読書やPC作業用のものと、寝床で文庫本を読むときのためのものと、二つだけしか使っていませんが。



昨晩は、ホテル泊でした。今朝は、どんな朝食でしょうか。楽しみです。

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確定申告と3.11

2016年03月11日 06時01分48秒 | Weblog
確定申告の作業が遅れて焦っているとき、思い出されるのは2011年の春のことです。あのときも、ぎりぎりに作業を終えて封書で投函し、ほっとしているところに、3.11の大きな地震に見舞われたのでした。

写真は2011年3月11日の夜のものですが、このブログで当時の記事(*1)を振り返るとき、緊張感がピリピリ伝わってくるようです。自分の文章ながら、今よりずっと格調高いように感じられてなりません(^o^;)>poripori
そして、皆様からいただいたコメントを読み返す度に、ほんとうにありがたいものだと頭が下がります。当時、考えたこと(*2)は、今も変わらぬ思いとなっています。

なにはともあれ、まずはこの確定申告を終えて、早く畑に出られるようにしなければ。

(*1):「電網郊外散歩道」2011年3月11日前後の記事
(*2):例えば「縮こまらないで」~「電網郊外散歩道」2011年3月「女川原発と福島第一との違いは古文書にある慶長津波の評価にある?」~「電網郊外散歩道」2011年4月「ストレートな言葉の力」~「電網郊外散歩道」2011年7月

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コンヴィチュニー指揮でシューマンの交響曲第1番「春」を聴く~通勤の音楽から

2016年03月10日 06時02分29秒 | -オーケストラ
今年は雪が少なく、たまに雪が降ってノロノロ運転になることがあったとはいえ、たいへん楽をした冬でした。近頃の通勤の音楽は、USB-メモリに保存された音楽の中から、R.シューマンの交響曲第1番「春」。この季節には定番の選曲ではありますが、ベートーヴェンの「スプリング・ソナタ」と共に、春らしい気分を味わうことができます。

  • ジョージ・セル指揮クリーヴランド管
  • カラヤン指揮ベルリン・フィル
  • クーベリック指揮バイエルン放送響
  • スウィトナー指揮ベルリン・シュターツカペレ
  • コンヴィチュニー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管

なんとまあ、ぜいたくな話です。



最近、聴き始めたのが、コンヴィチュニー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管による1961年の録音です。この曲の初演をした伝統のオーケストラによる演奏という予断と偏見もありますが(^o^)、昔懐かしいコロムビア・ダイヤモンド1000シリーズでおなじみの演奏家のステレオ録音を、パブリック・ドメインになった今(*)、じっくり聴いてみたいという懐旧的心情も働いています。それを割り引いても、けっこういい演奏だと思いますけれどね~。

(*):シューマン:交響曲第1番「春」~クラシック音楽・リスニングルーム~ Blue Sky Label ~クラシック音楽へのおさそい

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とにかく確定申告を終えなければ!

2016年03月09日 06時02分40秒 | 週末農業・定年農業
年度末は、なにかと忙しい季節です。加えて、我が家では母屋の水回りを中心としたリフォーム工事の最中ですので、あれこれ用件が入ります。とはいうものの、週末農業で出荷した分の農業所得の確定申告をする必要があります。その期限が15日ですので、なんのかんの言っても、実際あと一週間しかありません。とにかく確定申告を終えなければ! 読書も音楽も剪定枝の後始末も、その後です(^o^;)>poripori

写真は、A4判のキャンパスノートを使っていた1990年代の備忘録です。そういえば、今年は花や風景を写真におさめる余裕がありません。困ったものです(^o^;)>poripori

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映画「殿、利息でござる」が楽しみ

2016年03月08日 06時05分30秒 | 映画TVドラマ
磯田道史著『無私の日本人』より「穀田屋十三郎」を原作とする映画が作られているそうです。なんでも、若殿をフィギュア・スケートの羽生結弦クンが演じるという話題性もさることながら、『武士の家計簿』に続き、おもしろい映画になりそうと期待が大きいです。2016年5月14日封切予定とか。近くの映画館では、いつ頃からの上映になるのだろう? 興味津々です。

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山形交響楽団第251回定期演奏会でベートーヴェン、ブルックナーを聴く

2016年03月07日 21時49分04秒 | -オーケストラ
2015/16シーズンの最終回、第251回定期演奏会を聴きました。今回は、

  1. ベートーヴェン:序曲「プロメテウスの創造物」
  2. 同:序曲「アテネの廃墟」
  3. 同:序曲「エグモント」
  4. ブルックナー:交響曲第2番 ハ短調 (1877年第2稿・キャラガン校訂版)
     飯森範親指揮 山形交響楽団

というプログラムです。



ロビー・コンサートはチェロ五重奏で、ビゼーの「5本のチェロのためのカルメン組曲」とチャイコフスキー「アンダンテ・カンタービレ」Op.11でした。左から小川和久・邢広京・久良木夏海・渡邊研太郎・茂木明人の五人が勢ぞろい。なんでも、このうちお二人が誕生日だったのだそうです。ケーキとろうそくというわけにはいかず、演奏のほうでは、きっと汗をかくほど苦労されたことでしょう(^o^)/
ヴァイオリンのような軽やかさは難しいとしても、カルメン組曲で奔放な女性を表現した小川さんと、これを支えた山響チェロ部隊に拍手!



ホール内に入り、西濱事務局長と飯森音楽監督のプレトークでは、来シーズンのベートーヴェン交響曲全曲演奏の序曲となるとともに、現在の山響の規模で演奏可能なブルックナーの交響曲の最後になる第2番を、一部はノヴァーク版を取り入れながらキャラガン版で演奏する理由について、コンパクトですっきりしているからで、響きの余韻を楽しんでほしいと説明します。これは、大規模なオーケストラで演奏するだけがブルックナーの演奏ではないとする試みとも通じる、一貫した考えでしょう。

楽器編成は、第1ヴァイオリン(10)と第2バイオリン(8)を左右に対向配置とし、その奥にチェロ(6)とヴィオラ(6)、左手奥にはコントラバス(4)が並びます。正面奥にはフルート(2)とオーボエ(2)、その奥にクラリネット(2)とファゴット(2)の木管楽器、さらにその奥にはホルン(2)とトランペット(2)の金管楽器、その右にはバロック・ティンパニが配置されています。
今回もまた、ステージ上には何本もマイクロホンがセットされ、録音が行われているようです。コンサートマスターは、高橋和貴さんです。

第1曲:ベートーヴェンの序曲「プロメテウスの創造物」Op.43です。この響きは、交響曲第1番とほぼ同じ頃の作品だけありますね~。
第2曲:序曲「アテネの廃墟」Op.113 では、ホルンが2本追加され、4本となります。実はバイロン・フィデチスさん指揮の第195回定期演奏会で、車を飛ばしてもこの曲だけ間に合わなかったことがあり(*1)、生では初めて聴きました。
第3曲:劇付随音楽「エグモント」序曲。いつもは、ピラール・ローレンガーが歌い、ヴッソウが外国語のラジオドラマのような語りを入れたCDでなじんでいますが、やっぱりホールで聴く生の演奏は別格です。

ここで、もう休憩(^o^)/

そして、後半はブルックナーの交響曲第2番です。1877年第2稿・キャラガン校訂版ということですが、そもそもこの曲自体があまり聴き馴染みのないものですし、当方のような素人音楽愛好家には版の問題などはまったくノー・プロブレム(^o^;)>poripori
楽器編成は、最後列に現代のティンパニとトロンボーン(3)が加わります。うち1本はバス・トロンボーンのようです。したがって、Fl(2)-Ob(2)-Cl(2)-Fg(2)-Hrn(4)-Tp(2)-Tb(3),Timp.及び弦楽5部(10-8-6-6-4)という形でしょうか。

第1楽章:モデラート、弦の上に木管の音を乗せ、さらに金管とティンパニでダメ押しするというブルックナーのやり方は、たいへん効果的です。演奏するほうは、実は大変なのでしょうが(^o^)/
第2楽章:アンダンテ、荘重に、やや動きをもって。穏やかで大きな始まり。弦のピツィカートの中でのホルン・ソロが印象的です。
第3楽章:スケルツォ、適度に速く。炸裂する金管、ティンパニも活躍し、いかにもブルックナーといった風情です。
第4楽章:フィナーレ、より速く。迫力ある全奏の後の全休止、そして優しい弦楽合奏。こんな感じが何度も繰り返されます。中間部は長い長い展開で、なんだか終わりそうにない感じですが、ようやく追い込み態勢に入ったと思ったらティンパニの連打と怒涛の強奏で、緊張感を保ったままの終結です。ブラ~ヴォ!



終演後のファン交流会で、飯森さんがちょっとだけもらした、ブルックナーの残りの曲、第0番・第8番・第9番の3曲については、新しい県民会館のホールができる時までに経営状態を改善できれば、ぜひやりたいものだ、とのことでした。それは嬉しい目標です。西濱新事務局長を中心とした改革で、経営状態は着々と改善されているそうで、新シーズンからは定期演奏会を毎回二回公演に戻すことができそうだとのこと。我らが山響の今後の活躍と経営の安定を祈りましょう。



実は、この後にいくつかの自主公演のお知らせがありました。久良木夏海さんのチェロ・リサイタルのチケットを、ご本人が用意しているとのことでしたので、さっそく購入して来ました。直近の演奏会予定は次のとおり。これを目標に、せっせと働きましょう(^o^)/

■3月30日(水)19時~、県民会館やまぎんホール、オーケストラの日2016コンサート
■4月3日(日)14時~、文翔館、久良木夏海チェロリサイタルVol.2
■4月24日(日)18時30分~、文翔館、山形弦楽四重奏団第59回定期演奏会



(*1):山形交響楽団第195回定期演奏会を聴く~「電網郊外散歩道」2009年3月

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マツダ・デミオXDディーゼルの近況と実走行時の排ガス測定値

2016年03月06日 06時01分07秒 | 散歩外出ドライブ
マツダ・デミオXDディーゼルは、快調に走っております。このところの燃料消費率は、おおよそ 21~22km/L というところでしょうか。冬季間の渋滞を経験した割には、良好な結果です。残念ながらマッドフラップを装着していないものですから、外見上は晴天で乾いた泥はねが目立って困りますので、今度の12ヶ月定期点検の際には、

  • エンジンオイル交換
  • マッドフラップの装着
  • 助手席シートベルト警告の調整

などを依頼する必要があります。



もう一つ、クリーン・ディーゼルエンジンとはいうものの、実走行時の排ガス測定値はどうなっているのか、興味を持っておりました。報道によれば、通常のディーゼルエンジンの排ガスを後処理で吸収するというタイプの車は、軒並み測定値が悪化し、低圧縮比を特徴とするマツダのディーゼル車のみが基準をクリアした(*1)とのことです。このあたり、ディーゼル・エンジンの本質的な改善に成功したマツダ社の独壇場という印象です。デミオXDを、自信を持って走らせることができそうです。

(*1):ディーゼル車の国産4車種、排ガス基準の2~10倍超過~東京新聞、2016年3月4日付より



さて、本日は午後から山響第251回定期演奏会の予定。曲目は、ベートーヴェンの序曲集「プロメテウスの創造物」「アテネの廃墟」「エグモント」と、ブルックナーの交響曲第2番です。午前中は、確定申告のための事務作業と、サクランボの剪定枝を集める作業があります。定期演奏会を楽しみに、しっかり働きましょう(^o^)/

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万年筆のペン先の刻印について

2016年03月05日 06時03分34秒 | 手帳文具書斎
年齢的な事情で、細かな文字や記号の識別が難しくなりつつありますが、それでも拡大レンズがあれば話は別です。手許にある万年筆のペン先に刻まれた文字や記号は、どんな意味があるのだろう? おそらくは誰でも感じるであろうペン先の刻印の意味について、様々なブログ等で知った知識をまとめながら、備忘のために記録しておきましょう。

■パイロット カスタム・グランディ

ここで、「T778」の意味は、東京工場で1978年の7月に製造されたことを表すのだそうです。

■プラチナ #3776 ブルゴーニュ

紙面の印象もやっぱり細字です。プラチナの「p」マークが、なんだかユーモラスでおもしろい。

■モンブラン マイスターシュテュック149

刻印の量が多いです。しかも、ペン先が18金(750/1000)と、ワタシには不似合いなほど贅沢なもののようです。

■パイロット カクノ


■パイロット プレラ


ふむふむ。な~るほど。こういうのは、意外に手描きのイラストがわかりやすい。実物の写真で、くっきり鮮明に拡大撮影するよりも、はるかに容易です。そういえば、学生時代に愛用したセーラーの「キャンディ」万年筆も、たしか刻印はほとんどなかったのでは。あれもコストダウンの一環だったのでしょう。

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母屋のリフォーム工事始まる

2016年03月04日 06時03分29秒 | 料理住居衣服
三月に入り、母屋の水回りを中心としたリフォーム工事が、いよいよ始まりました。まったくの新築・改築ならば、どこかに住む家なり部屋を借りるところですが、高齢の老母もいることですし、そのまま住みながら工事をすることとしました。ど田舎で無駄に広い農家では、少々水回りを工事しても、居住部は変更する必要はありません。八畳程度の部屋の脇に仮設の台所を増設するだけで、あっという間に台所の問題は解決しました。



古くなった母屋の間仕切を撤去すると、むき出しの構造が姿を見せます。亡父が茅葺き屋根を一度改修してはおりますが、築二百五十年になろうとする農家の太く巨大な梁を見ると、積雪に耐えてきた理由が実感できます。棟梁は、この梁を生かし、そのまま見せるリビング・ダイニング・キッチンを計画しているようです。まだまだ時間はかかりますが、妻だけでなく私も、なんだか楽しみになりました。





これに関連して、「料理・家事・DIY」というカテゴリー名を「料理・住まい」に変更。リフォーム関連も、ここに区分することにします。

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専用筆記具と汎用筆記具

2016年03月03日 06時02分09秒 | 手帳文具書斎
筆記具には、どうやら汎用筆記具と専用筆記具という違いがあるようです。胸ポケットに差したり、ペンケースに入れて持ち運び、様々な場面で使うものを汎用の筆記具とし、特定の手帳やノートに付属させ、その手帳やノートでのみ使用するものを専用筆記具と呼ぶことにすると、私の場合は明確な違いがあります。

■専用の筆記具

  • 枕元の雑記帳 ---- パワータンク (キャップ式、黒、1.0mm)
  • システム手帳 ---- Jetstream F (3色、0.7mm)
  • B6レザフェス ---- Preppy万年筆 (M:0.5mm,古典ブルーブラック)
  • カ・クリエ ------ Signo RT1 (0.5mm, ブルーブラック)

寝転んで上向きでも書けるパワータンク、スリムでシステム手帳のペンホルダーにぴったりサイズの3色ジェットストリームF、裏抜けしにくい古典ブルーブラック専用としたコンバータ採用の万年筆プレッピー、珍しくブルーブラックの色を持つボールペン:シグノRT1など、いずれも特徴的な個性を持った製品ばかりです。



■汎用の筆記具

  • パイロット:カスタム・グランディ(M) ---- パイロットの青インク・カートリッジで使用している万年筆
  • プラチナ:#3776ブルゴーニュ(F) ---- 細字、プラチナ社の古典ブルーブラック・ボトルインクを使用している万年筆
  • モンブラン:マイスターシュテュック149 ---- M:中字(実際は太字相当)、プラチナ社の古典ブルーブラック・ボトルインクを使用している万年筆
  • 三菱 Jetstream ---- 黒:1.0mm/0.7mm 演奏会記録等、速記的な用途に使用しているボールペン




その他、「カクノ」や「プレラ」など廉価万年筆も愛用していますが、多くの紙で裏抜けを心配せずに使える、プラチナ社の古典ブルーブラック・インクを使っているものが多いです。

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絵を飾ること

2016年03月02日 06時02分37秒 | 料理住居衣服
自分で絵を描くような才能も習慣もありませんが、自宅に絵が飾ってあるのは良いものだと思います。我が家の場合は、叔父が絵を趣味として長年描いておりましたので、いただいた絵が何枚かあります。どちらかといえば、故郷・山形の農村風景や旅先でのスケッチなどを元にした風景画が中心ですが、中には静物とイメージを組み合わせたようなものもあります。

美しい風景や色、形、明暗など、ふと眼を上げた時に見えるものは、音楽とは異なりますが、何とはなしに心の慰めになります。作者が費やしたであろう労力と時間は多大なものでしょうが、鑑賞する方はいたって気楽なもの、まことにありがたく良いものです。このところ、母屋のリフォーム工事に関連して、かけてある絵を外してしまいましたので、なんだかがらんとして味気ない気分を味わっております。

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