神里雄大さんの脚本「イミグレ怪談」と『超えていく人』南米、日系の若者たちをたずねて、をカウンターで購入した。
夜中に帰って『超えていく人』を読み始めたが、意外と面白い。「劇」は偶然劇場で出会った才気闊達なプロデューサーで翻訳、脚本も書く方と立ち話をしたが、説明調の脚本への指摘はなるほどだった。移民に関しては既知の意識があり、彼の講義調の長話はいいよ、のニュアンスはわかった。解説が入ってしまうと、興ざめしてしまうのも確か。
アフタートークは面白かった。脚本を丁寧に読んでまとめてみたい。
偶然なのか、「トートーメー万歳」は戦争中に砲弾で亡くなった孝太郎が死後も舞台に自由に出没して家族の日常に絡んでいく、生者と死者が織りなす喜劇。誰がトートーメーと財産を引き継ぐか、を巡る沖縄社会を風刺する作品。
一方、神里雄大の「イミグレ怪談」は、タイ、ボリビア、沖縄を風のように行き来する幽霊(死者)か生身の人間(生者)の物語だった。悠久の時間に照らした時、わたしたちは皆死者の影のごとき存在なのかもしれない。故に、幽霊の語りは、生身の人間の語りでもありえる。人の存在が無意識であろうと意識的であろうと、過去から営々と引き継がれてきた命を、歴史を経験を継承して在りうる実存を生きていることは、紛れもない事実である。