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大城ナミさんは、2003年にインドのジャイプールで開催されたIFTR国際学会で出会ったインド舞踊の大家でかつPhDの基調講演者を思い起こさせる。
研究者であり優れた舞踊家のその方は、直にお話しする機会があり、「日本の着物がタイトで、身体を帯びでしっかり縛っているのは、規律性が高い文化を象徴しているね」と話した。
対してインドの民族衣装、サリーはもっと水のように自由だと~、文化の違いをこのように話した。確かに一枚の布を衣装にするインドで感じたのは、そのカラフルなサリーを自由に着こなしているインドの女性たちの逞しさであり、インド人女性研究者の押しの強い饒舌だった。
また彼女たちは伝統衣装のサリーを現代のセンスに乗せるかのようにアレンジして身に着けていた。この傾向はこちらでも~。
ひるがえって沖縄の伝統的な衣装は、例えば腰を締め付けない「ウシンチー」と呼ばれる様式で、着心地が軽やか~。また胴衣(ドゥジン)やカカンなどもゆったりとしている。
亜熱帯の琉球・沖縄と四季の変化が明瞭な日本の着物とは差異がある。縛る文化と緩やかな文化だろうか。芭蕉布にしても、風通しもいい。
横滑りしてしまったが、言いたかったことは、研究者で舞踊家という点に大城ナミさんの個性がきらめいているのだという事である。
ところで今回の独演会は一部が琉球舞踊、第二部が創作舞踊で構成されていた。
第二部の創作舞踊、組曲舞踊「孵水(すでぃみずぃ)」は確か20年以上前の初演を観た記憶が残っている。壮大な組曲舞踊の構成。
音楽は斬新で耳目を惹きつけた。ナミさんは出身地羽地の自然現象(川の荒廃)を契機として物語を編んだのらしい。それは生物の生死と再生の物語である。歌詞もシンセサイザーの音楽も歌も命の誕生から自然破壊、島に生きる人々の生活の中の軋み、科学技術の発展に伴う翻弄、家族の崩壊など、自然との一体化が切り裂かれていく中での苦悩があり、やがて目覚めがあり、人々は周辺の動植物、自然環境と共生する。
冒頭の生命の誕生と苦悩の場面がより惹きつけた。命の誕生するシーンと苦悩の表出をナミさんは独演で魅了した。
自然や科学技術、人間との関係性をテーマにした組曲は、歌も音楽のリズムも楽しませた。シンセサイザーと太鼓、ギターの共鳴する響きは聖なる空間を押し広げた。
第一景 自然との調和
生命の誕生、無邪気に遊ぶ子供たち、自然と共に生きる若者
第二景 科学技術の発展と開発、そして自然破壊、老人たちの嘆き
第三景 苦悩、と目覚めー苦悩と神の啓示、祈り、認識
第四景 自然との調和ー水の精と人間
アメリカで一人のダンサーが1時間も自然の四季を踊りきった舞台を観たことがあるが、組曲として自然と人間や科学技術の関係性を叙事詩のように歌い踊るテーマは斬新で色あせていない。昨今は、AIなどの登場で、その存在は人間と共存し(踊り)人間を凌駕し、自然(人間)をも破壊することになるやもしれない。核兵器や原発の危険性も常に身近にあり続ける~。
リアルに科学技術の発展は世界戦争のみならず多くの人々を犠牲にしてきた。
人類史そのものに一矢を放つテーマだと言える。
テーマや音楽構成はインパクトがあった。独演のシーンも、特に苦悩の表出など、しかし群舞の場面には物足りなさが残った。群舞の構成や集合的身体表出はかなり時間をかけて練りあげた高まりが観たかった。調和の中の歓喜にしても、もっと熱量がほしい。
おそらくこの組曲舞踊は、何度も繰り返し上演することによって、優れた身体表現の集合的美として蘇っていく可能性を持っている。演劇的要素も加味されている。老人たちの嘆きなどは特にそうだ。
大城ナミさんが舞踊理論に長けた方であり、型の踏襲や表出に対する一方ならず深い思いを抱いて「舞踊とは何か」に取り組んでいることは美しい装丁のパンフレットからも感じられた。 豪華な地謡の方々、また寄稿者(作詞家そけいとき、親泊本流親扇会家元親泊興照、波照間永吉、宮城隼夫)、各氏の文面も読みごたえがあった。
古典女踊の「伊野派節」は仲村逸夫さんの歌三線の演唱に酔った!あの朗々たる美声は実に素晴らしかった!
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上品な装丁のパンフレット
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親泊本流親扇会二代目家元親泊興照 大城ナミさん
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