ラジオドラマは時々車を運転中、NHKFMから流れてくる物語を聞いているぐらいだが、意外と惹きつけるという事はわかる。時に時空間が煩雑で起承転結があいまいなところがあるなー、もっとディテールが知りたいのに、そこは想像で埋めてくださいのスタイルでもあるような印象をもっている。
謝名元さんのこの分厚い『ファイダーの中の戦場』はラジオドラマの脚本と戯曲だが、読みやすく、中に没入させる魅力があることが分かった。
ベトナム戦線に従軍している戦場カメラマン美里正彦とベトナムで知り合った看護婦の女性洋子との出会いとその後のかなたと東京、沖縄をからめた物語の重層性に感銘を受けた。ベトナムの避難家族と同行した悲劇は、沖縄の戦場を意識させ、沖縄北部の森は母と子の悲劇を秘めていた。戦後77年、沖縄の戦後は終わっていないのは紛れもない事実なのだと、作品は突き付けている。
意外とラジオドラマの生な部分と抽象的な表現にハットした。「命口説」もいい。すでに戯曲バージョンもあるが、ラジオドラマの重層性の面白さがある。過去と現在、未来が重なってそこから明瞭なイメージが浮かんでくる感じなのだ。
それにしても昨今出版された『海の一座』も、この作品集も、劇作家、映像作家謝名元慶福の創作の魅力を存分に伝えている。謝名元慶福論が書かれるべきである。現代沖縄演劇論集をまとめないといけないなー。
東西の演劇を学び、観てきた者として、やはりやらなければと思いつつの現在~。父権主義の濃厚な沖縄のアカデミアで、彼ら(MEN)の見えない隙間にある真実を表にださなければだね。権威主義のおかしさがあちらこちらに~。