琉球歌劇「奥山の牡丹」に総聞(スーチチ)と漢字表記されている男性は首里の平良殿内に仕える男性でターリーの妾の愛人男性の役回りです。どうも漢字は総ではなく惣ではないかと思うのですが、二つの「奥山の牡丹」の台本を見比べてみると総聞となっています。ネットで首里・那覇語彙について調べてみると以下の説明があります。
スーチチ /suucici/ 1 http://ryukyu-lang.lib.u-ryukyu.ac.jp/srnh/details.php?ID=SN17654
(名詞) 古語 惣聞
意味:
ウドゥン uduN [御殿]、トゥンチ tuNci [殿内]の家の財産の管理人。この下に一、二名の ジデー zidee [下代](会計係)と多数の使用人がいる。
ジーヌ トゥランネー ナカグシクウドゥンヌ スーチチヌ イミシェーシン タンメーヤ ハニミシェーテールフージ。Ziinu turaNnee nakagusikuuduNnu suucicinu imiseesiN taNmeeja hanimiseeteeruhuuzi.
ファーフジェー ウドゥンヌ スーチチ ヤミシェータンディ。Hwaahuzee uduNnu suucici 'jamiseetaNdi.
この辞書で説明されているように、歌劇の中の総聞は殿内の財産管理人の役回りだとわかります。八重山諸島では惣聞は「農耕に熟知した王府公認の地方役人のことで、村落の成員の中でも年長者、位階持ち、村落や祭祀に関する指導や助言をおこなう顧問的な役割も担っていた」(石川恵吉さんのレジメ「儀礼歌謡と担う男性長老に関する一考察」-八重山諸島の事例を中心にー、から引用:「沖縄文化協会2019年度研究発表レジメ集より)とのことです。
殿内に仕えるわけですから、位階はもっていたのですね。殿内は王府に仕える身分の高い位階の屋敷ゆえにその管理をする人材が必要だったのですね。なるほどです。
総聞ではなく惣聞でしょうか?『琉球俗謡』の中に収録された最も古い「奥山の牡丹」の台本を確認したいのですが、今印刷して手元にあるのは7巻までで、14巻までのがどこかにあるか、探さなければならない。印刷しないでHDDの中にそのまま残っているのかもしれないー。
歌劇台本は修正する必要がありそうですね。
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