その地域にはその地域の四季折々の自然の動きがある。
雨雲の通り道、雷雲の通り道、季節風の向き・強さ、土地の傾斜、日当たり、と考えたらきりがない。
私の所は幸い雷の通り道では無いが、怖いので先日のブログのごとく、万全の対策はしている。
でも、もっと日常生活に密着した心地よさを求めるには、春から秋の風の動向を知り、如何に家の設計に採り入れるかで、変わって来る。
一条の高気密高断熱の家に風は必要無いだろうって?
私は完全に外部と遮断された生活は好きでは無い。
かといって、それを完全に拒む事もしたくない。
要は、状況に応じて使い分け出来れば最高の快適性が得られると云うこと。
大は小を兼ねる如く、一条の高気密高断熱を持った上で、時には窓を開け放ち自然に興じる。 これが最高!
そのためには、その地域の季節ごとの風を読む。
土地と家を同時に新天地に入手される方には難しいかもしれませんが、ネット上でその様な情報を入手する事も今の時代可能なわけだ。 あとは自分のやる気のみ。
私の場合、中古で買って22年住んで、建て替えることになったので、今までの家に多くの不満があり、何をどうしたら改善できるか知り尽くしていた訳だが、別に違った場所に住んでいても共通点は有るはずで、常にその様な問題意識を持って居るかどうかだと思う。
この場所は那須山の傾斜の途中にあり、南東方向に緩やかに傾斜し、春から秋にかけて南東から南の微風が常に吹いている。
この風を掴めれば、快適な生活が出来ると確信していた。
窓にはスライド型の窓と、開閉型の窓がある。
これを上手く組み合わせてヨットの帆の如く涼しい風を屋内に取り込める。
設計士さんだって、その土地勘がある訳では無いかもしれない。 恐らく利き手で開けやすいとか、道路や門の向きなどからその開閉の向きを無難な方向に設定してくれるのかも知れない。
つまり、運が悪ければ逆の向きになってしまう場合もあり、建て主が何を以ってそれを判断するのか、しっかりした考えを持っていないとそのまま完成となってしまう訳だ。
窓の目的は開けやすいかでは無く、風を取り入れるために開けるものだから。
私の場合、5枚の開閉窓を提案頂いた向きと逆にして頂いた。
一番考えたのは、バスルームと脱衣場にそれぞれある開閉窓。
夏、部屋にはエアコンを作動させるが、バスルームの湿気を取るのに風を通すとなると何処からか空気を入れるか出す事になる。
部屋や廊下を通して空気を出し入れしたのでは、折角のエアコンの快適さが失われてしまう。
そのため、バスルームは隣の脱衣場と連携して単独で空気の流入を可能とする事で、バスルームの乾燥はしつつも、他の部屋の室温や湿度には影響を与えない工夫が必要と考えていた。
この課題を解決するために秘策を考えた。
その秘策とは・・・・・
バスルームと脱衣場にそれぞれ一つづつある開閉窓を背を向ける様に開くようにした。 観音開きと逆のイメージ。
その間にはエコキュートを配置して壁を作った。
この付近では夏から秋にかけて図面の左方向から吹く風が殆どであり、風は半開きにした開閉窓からバスルームに取り込まれ、そのまま脱衣場から抜けて行く。
右側にある脱衣場と廊下の間のスライドドアを締めておけば、他の空間には影響を与えずこの2部屋だけで機能できて、バスルームは直ぐに乾燥できる仕組みだ。
ついでだが、脱衣場右側にあるトイレの窓も風下に向けて開くようにしてある。
要は、風を入れたいのか出したいのか、その地域の風の動きを知る事により、窓の開閉方向を決めれば良いのだ。
あとは、晴れているのか、外の湿度はどうなのか、気温はどうなのか、その時々の状況を見ながら窓を開け閉めすれば、こんな快適な住空間は無いと云いたくなるような環境を得られる。
電気を使うだけが心地よさを得る唯一の方法では無い訳だ。
南東向きの家の前面方向にある開閉窓の開閉方向は風向きを考えれば当然写真の様になる。
あとは、どこもそこも窓を全開にすれば良いと云うものではない。
風の入り口は小さめに、そして出口は広めに。当然なのだが、加えて入り口と逆方向を開けるが鉄則。
これって、意外と知っているつもりで、理解出来ていない人が多い。
何処もそこも全開では、強風ならともかく微風は家の中で、なかなか心地よい「そよ風」とはなってくれない。
何十回と体感していても理解できない人には意味のない事なのだろう。
また、夏の朝の涼しくて心地よい風も10時を過ぎると暑くなり、そのままにしておくと室内の壁や床まで熱くなってしまう。
それから窓を閉めエアコンを掛けても折角の高気密高断熱がもったいない状況に陥ってしまう。
暖かさも保温する訳ですからね。
ハード(家や窓の構造)/ソフト(使い方)両面が合致して初めてその効果が発揮できると言う事もお忘れなく。
春から夏の朝。
2Fのバルコニーのサッシを1/4開け、1Fのウッドデッキのサッシの2箇所だけ開けると、涼しい風が2Fから1Fへ階段を駆け降り家中を駆け抜け、爽快な気分でコーヒータイムが楽しめる。
今年も、もう時期その季節が訪れる。
自分で考え抜いて手に入れた住空間の季節。 待ち遠しい限りだ。