
出雲に行きたしと思えども
出雲は 遠い
それでは
蒼い背広を着て
大宮の氷川神社に行こう
社殿に向かう人群れの中に
やさしい白い顔を見た
さびしげな表情を見た
ねじまげられたこの国の歴史
封じ込められたこの国の歴史
「神武東征」の名のもとに
どれだけ多くの無辜の人々が
抹殺されたことか
殺戮されたことか
樹間のひぐらしの声は
消された男たちの
ためいきか
すすりなきか
「おやすみなさい」
「おやすみなさい」
「ぐっすりと おやすみなさい」
ようやくにして
ほほえみが 浮かんだようだ。