それでも 私は此処に居ると 心が休まる
母がお世話になっている 介護施設・・・
「 どうしてたの? 」
「 ちょっと 風邪をひいたり 忙しくしていて 」
そんな風に スタッフの人たちと挨拶して
お昼を食べている途中の 母の傍らに座る
一口一口 ゆっくり スプーンで 口に入れてあげながら
母の穏やかな顔をみて ホッとした
「 みんな元気ね? 」
静かにうなづく スタッフ
でも 何か ちょっとした違和感を感じて
周りを見回し Tさんがいない事に気づいた
食器を片づけに キッチンに立った時 そっと訊いてみた
「 Tさんは 入院なさったの? 」
「 いいえ 亡くなったんです 」
その日は 本当に僅かな人と一緒に 歌を歌った
お部屋で横になっている人たちにも 歌を届けてあげようね
Hさんの好きな「 故郷 」を 歌おう
背後から 新しい歌声が加わった
ショートステイで時々みえる 「 ママさん 」だ
呼吸が苦しくて 長い酸素吸入の管に繋がれている
「 ちょっと調子が悪いけど 少しだけなら歌えるわ 」
こんな風に過ごして 私が帰る時が来た
エレベーターの前で スタッフに付き添われた 車椅子の母に さよならを言う
「 私 犬を飼っていたんですけど・・・」と スタッフが話し始める
「 犬の1年は 人間の7年というでしょう?
ここにいる人たちの1日は 私たちの1日よりも もっと速いスピードで・・・ 」
エレベーターの扉が開き
彼女の途切れた言葉の続きに心を残しながら 私は二人に手を振った