「もう 行かなくちゃ・・・」
彼女は 椅子から立ち上がり 背を向けた
色鮮やかなドレスの裾が ふわりと広がる
その瞬間 さっと日が翳った
枯れ草の香りのする髪
濡れたような赤い唇
なだらかな丘に似た曲線
焼き尽くすような情熱の後には
心が凍るような稲妻
気まぐれに振り回され
我が儘にはうんざりしている筈なのに
輝く光に 目がくらみ
熱い息吹に 惑わされる
いつの間にか 何も考えず
今日一日だけを 過ごす日々
彼女が去った後
辺りは 急に光を失い 灰色に沈む
いつかまた 彼女は 突然に
私の前に 悪びれもせず 現れるのだろう
笑いながら 輝きと力に充ちて
重く立ち込めた雲の下
私は 気流に逆らい 片肺飛行を続ける
遥か遠くの 透きとおった秋の光を目指して