このところのテレビは、毎日、関西各地の“桜の名所”を紹介している。
その中で2・3日前に、≪大野寺の小糸しだれ桜≫が紹介された。
大野寺のしだれ桜は、その美しさはもとより、大野寺の(川を隔てた)向かいの崖に彫られた石仏(弥勒磨崖仏)に捧げるために植えられた桜として、
特別なものなのだそうだ。
見頃は今週いっぱい、とのことだった。
私は昨日(10日)の午後になって、思い立って、行ってみることにした。
大野寺は、近鉄・大阪線の“室生口大野”駅から、歩いて5分の所にある。
駅からは近いが、上本町から“室生口大野”までは、1時間くらい掛かる。
決して近いとは言えない。
でも、電車が大阪から離れるにつれて、鄙びた風景が車窓に広がり、私の心は穏やかな幸せに満たされてきた。
“室生口大野”駅に到着。
駅の周辺には、ソメイヨシノがたくさん植えられていた。
駅周辺のソメイヨシノもかなり花びらを落としていたが、それはそれで侘びた風情があって、私は好きだった。
駅からの道をまっすぐ南下して、大野寺へと向かう。
道沿いの風景は何とも鄙びていて、コンクリートジャングルの中で暮らしている私を、穏やかに癒してくれた。
道路脇のお家の庭に植えられている、何の変哲もない桜にも、なぜか心惹かれる。
大野寺の手前に、綺麗なピンクのしだれ桜が植えられていた。
そのピンクのしだれ桜の向こうに、大野寺の小さな門が見えてきた。
大野寺の境内に入る。
あまり広くない境内の中心に、≪小糸しだれ桜≫が植えられていた。
≪小糸しだれ桜≫という名まえが示すように、滝のように垂れる枝に付く花の一つ一つは、とても小さく可憐だ。
境内では白木蓮が、たくさん花をつけていた。
サンシュの木の向こうに、仏を刻んだ崖が見える。
大野寺の境内を出て、弥勒磨崖仏が彫られた崖を眺められる場所に近づいてみた。
崖の手前を流れる川に、カワイイ新芽を出したばかりのモミジが、枝を伸ばしていた。
振り返ると、小糸しだれ桜の全体を、初めて眺めることができた。
大野寺を後にし、もと来た道を駅へ向かった。
行きでは右手にあった濃いピンクのしだれ桜が、今度は左手で、やはり華やかに咲いていた。
室生口大野駅に近づくと、行きとは逆方向から見るソメイヨシノが、やはり私の心を惹いた。
私は、桜の花びらが散り敷いた長い階段を上がり、駅に入った。
最後に、駅のホームから見た桜と大野の里。