ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第8回狩野川薪能(その6~伊豆の国市で「古典芸能教室」)

2007-06-30 09:22:14 | 能楽

6月28日(金)、伊豆の国市の大仁小学校で「古典芸能教室」が開かれ、ぬえも参加して参りました。

これは8月の「狩野川薪能」に向けて実行委員会の方々の努力によって毎年行われている催しで、薪能で上演する曲目を、小学校で披露するのです。と言っても、「狩野川薪能」はもともと地元の小学生が中心的な役割で出演する全国でも珍しい薪能でして、「子ども創作能」と言って、地元の民話を能楽師が能の形式で再構成し、出演者はすべて地元の小学生ばかり、という創作舞台があったり、小中学生による連管(笛の合奏)があったり、中学生の仕舞があったり。見ている子どもたちにとっては「古典芸能教室」なのですが、出演する子にとっては「中間発表会」という位置づけになります。同じ小学生が観客とはいえ、はじめて人の前で舞台に立つのですから、薪能の前によい経験になったことでしょう。

薪能では「子ども創作能」や仕舞など子どもだけによる演目だけではなく、プロの能楽師による能と狂言の上演もあって、今年は ぬえは『一角仙人』のシテを勤めます。しかし、この能の上演曲目には毎年必ず子方が出演する曲を選び、そしてやはりその子方は地元の小学生に出演してもらっています。もちろん玄人に互して子方を勤める小学生には相応の特別な稽古を課し、東京での申合にも参加させます。ほかの演目と違って、玄人能では失敗は許されませんから。。

さて「古典芸能教室」の出来映えですが、「子ども創作能『江間の小四郎』」は、主役級の子どもたちは大変良い出来だったと思います。大勢の武士の役(立衆といった役割)と地謡は、あまり声が出ていなかったなあ。人前で演じる事の大変さでちょっと萎縮したかな?



  開演前の装束?の着付。こらこら少しは緊張せんか



  子ども創作能『江間の小四郎』

そして笛の連管では「破之舞」を取り上げて稽古していて、稽古が進んできた先日、笛だけが居並んで吹くのではなく大小鼓と太鼓も入れて合奏をする事に決まりました。この日はじめて囃子方と対面したというのに、講師の寺井宏明先生に後見について頂いて、立派に「破之舞」が吹けました。いやすごい、すごい。だって、笛というのはメンタルな面に左右されてしまう楽器で、稽古では良く吹けるのに、人前に出たとたんにまったく音が出なくなってしまう人もあるのですから。

そして『一角仙人』。今回はキリだけの、ほんの15分間の上演で、作物はとても用意できないので、囃子方の後方に金屏風を立てて、龍神二人はその後ろから登場してもらうようにしました。うん。声はよく響いている。型も間違いない。それほど緊張もしていないようです。しかし、型がやや速い。地謡や囃子と比べて、どうしても型が先へ先へ行ってしまう。ははあ、やはりこれは緊張が原因です。型に余裕がなくなって、動きに「ため」がなくなってしまっている。もう少し、地謡と合わせて舞う精緻な稽古が必要かな。おそらく自分でも型が速くなってしまっている事は気づいているだろうから、そうなった場合には「どの箇所でなら動きを一瞬止めて、型の時間調整をするか」という事を教えれば良いのです。これは次回からの稽古の目標にしましょう。



  能『一角仙人』。こちらは装束ナシで。

あ~思い出すなあ。。ぬえも『船弁慶』の後シテで緊張のあまり足が止まらなくなっちゃた事があったっけ。



  みんな がんばれ~(*^。^*)


タイトル画像は『江間の小四郎』の主要な役を勤めるみんな。
(左から小四郎=ひかり、安千代=夢知、大蛇=彩花)