ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第15回 明野薪能

2008-04-07 21:48:08 | 能楽

もう一昨日の事になりますが、4月5日、茨城県・筑西市で行われた「明野薪能」に参加してまいりました。

今回は薪能の15周年記念公演で、もうこの薪能も15年も続いているのですね~。終演後に毎回、実行委員会の皆様と出演者とがうち揃って打ち上げパーティがあるのですが、このとき、なんと第1回目の薪能の番組、チラシ、ポスターが展示されました。物持ちの良い人はいるもので。で、第1回目の薪能のポスターは手作り、番組も曲名と演者の名前が文字で書き表されているだけで、とっても素朴なものでした。でも ぬえ、第1回目から出演していました。へ~~、なんだか自分ではあっという間に感じるけれど、もう15年もお手伝いに伺っているのかあ。。

大倉正之助氏が企画して実現したこの薪能、じつは ぬえにはもっと違う意味で深く関係しているのでした。毎年夏に伊豆の国市で行われる「狩野川薪能」。。これも大倉正之助氏の尽力で開催されて、毎年 ぬえがシテを勤めさせて頂いている催しですが、こちらも今年で9周年を迎えます。そして、この薪能の際に使われる仮設舞台は、この明野薪能のお舞台なのです。

明野薪能の実行委員会のスタッフは大工さんや設計士の方など技術者が多くて、なんと薪能の際には毎回自分たちで仮設舞台を設営してしまうのです(!)。それで伊豆の国市の「狩野川薪能」でも茨城県から伊豆まで舞台を運び、明野薪能の実行委員会の皆さんが舞台を設営してくださいます。聞けば毎回、深夜に茨城を出発して早朝に伊豆に到着。それから1日がかりでお舞台を組み上げるのだそうで、それはそれは大変な作業です。

「狩野川薪能」では「子ども創作能」という、地元小学生が出演する新作舞台を毎年上演していますが、この明野薪能実行委員会のみなさんの苦労を知ってからは、開演前に必ず子どもたちを舞台に登らせて、明野のみなさんにお礼のご挨拶を述べさせるようにしています。やっぱり自分たちの舞台を支えてくださる人がある事を知って、その方たちに感謝の心を持って舞台を勤めなければ成果などあがるはずもない。

さて明野薪能では、こちらはやはり地元の子どもたちが出演する曲目があります。こちらでは狂言方がその指導にあたっていて、薪能の冒頭に小舞と狂言(ちゃんと装束を着けた本式の狂言)が上演されました。狂言を演じたのは高校生だったのですが、彼らは小学生からずう~~~っと薪能に携わっているのだそうです(!)。これまた稽古をそれだけ続けるのは並はずれた事でしょう。

東京ではもう桜はほとんど散ってしまったのに、当地ではちょうど満開でした。いつも桜の頃に催される薪能。風情があってよいものですし、子どもたちが毎回取り組んでいる姿も、桜に映えるような気がしますね。

今回の ぬえは伊豆の子どもたちの指導のために、開演前にこの舞台の寸法を計って、また終演後のパーティでは実行委員会の方々と写真を撮りあって、夏に伊豆の国市での再会を約束してお別れしました。伊豆の子どもたちのお稽古はいよいよ始動したばかりですが、夏までには、このお舞台を拝借して、そこで存分に稽古の成果を発揮できるよう祈っています。

それまでには子どもたちも、あるいはつらい思いをしながら稽古をする事もあるかも知れないけれども、やはり与えられたお役をやり遂げる事で、ひとつ彼らも大人になるのでしょう。そのためには、それを支える方々のお陰で自分たちが一生ものの体験をする事ができるのだ、ということを分かっておいて欲しいと思います。

茨城のみんなも、伊豆の子どもたちもガンバレ~~