ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

「現代能・狂言面 作家展」@早稲田大学演劇博物館

2008-04-16 02:07:50 | 能楽
>>山猫軒さま
まずはコメントありがとうございます。とっても示唆に富んだご発言で、ぬえも気がつかない点もありました。また、ぬえが以前から考えている事と同じ問題提起の部分もあって、それについては ぬえも思うところがたっくさん(;^_^A  あります。それについて書こうと思ったのですが、今日はまたいろいろな事があった日なので、とりあえず今日はその出来事を書こうと思いますので、ちょっと保留にさせておいてくださいまし~~

今日は表題の催しに行って参りました。。と言っても。。白状します。。まだ「展覧会」そのものを見てにゃい。。(・_・、) 行って来たのはこの展覧会と連動して行われた「演劇講座」です。今日は午前中は自分の事務仕事のようなことに熱中していまして、ついついその開講時刻ぎりぎりに早稲田大に到着しまして、しかも夕方からは自分の稽古をする予定にしていたので、閉講後はもう大急ぎで帰宅しなければならず、ついに肝心の展覧会を見損なってしまったのです。。展覧会はまた明日にでも見に行くか。。

さて「演劇講座」は 第1部~鼎談「創るにあたっての心構え」として能面作家の岩崎久人氏、高津紘一氏、そして狂言面作家の伊藤通彦氏が講師となり、小林保治氏が司会となって、能・狂言面の実作についての面打師の立場からの考えや体験が語られ、また 第2部~実演「実際にどう使われるかー曲とともにー」として野村四郎師、本田光洋師が計8面の能面を実際に掛けて、その使用曲の一部の実演が行われました。

まず行われた鼎談ですが。。正直に言わせて頂ければ、せっかくのこれほどの意欲的な企画なのですから、もう少し突っ込んだ展開を期待していたのですが、どうももう一つ焦点が合わない感じになってしまったと思います。ぬえは今回の講師の能面・狂言面作家のお三方とはいずれも個人的にお会いしたことがありますし、そのうちおふた方とはご一緒に飲んだこともある、という。。(^◇^;) だからこそ、それぞれ現代の能面作家の実情、そのあり方について熱い思いも持っておられるし、また それぞれ熱く「語る」方ばかりなのを知っていましたので、普段は一緒に語り合う機会もないであろうお三方に、自由に討論させて差し上げれば、ちょっと面白い提言も飛び出したんじゃないかと思います。もちろん、普段語り合う機会がなく、それぞれがご自分の仕事場で面と向き合っておられる講師の方が一堂に会するわけですから、いろいろと進行について熟慮された司会の小林師にも敬意を表しますし、時間の制約もありましたので、全体が模索の作業のうえにようやく実現した画期的な企画であることは十分に賞賛されるべきだと思いますが。次回、このような機会があるならば、ぬえはこのメンバーに、奈良在住の中村光江さんや、新進気鋭の新井達矢くんを交えて意見を交換する場面をぜひ見てみたいと思います。

第2部の実演では観世流の野村四郎師と金春流の本田光洋師という、どちらも能楽師の中でもとくに能面について造詣の深い方が講師として選ばれて実演する、これまた演劇博物館ならではの企画でした。流儀の垣根を超えて、おふた方が交互に面を掛けて実演し、そのとき実演しない方が面の解説と実演の地謡を担当される、という、おふた方にとっては大忙しのデモンストレーションで、紋付に面だけを掛けての実演は、面の動きに注目できて講座受講者にとってはまたとない機会だったと思いますし、両師とも話術に長けておられて、楽しい実演でした。

この時使われた面はほとんど演劇博物館所蔵、主に入江美法さんの面だそうですが、ぬえの個人的な感想ですが。。入江さんの面にしては、あまり感心できる面は多くなかったように思います。。それでも面をツカうと、グッと表情が出てきたり。面の隠された力もあったのでしょうが、やはり講師の両師が面に持っておられる探求心が面の魅力を引き出されのに相違なく、ぬえにとっては非常に勉強させて頂いた講義でした。

早稲田演博は、もうずいぶん以前になりますが同じような近現代の能面作家の展覧会を開いたことがありまして、その時に作られたパンフレットは明治以降。。実質は大正以降の、現代に繋がる面打ちの系譜をよく網羅した資料だったのですが、今回もよくまとまったパンフレットが作られたようです(ぬえは展覧会をまだ見ていないので、受講者が持っているのをチラ見しただけですが。。(^◇^;)。これも明日手に入れて蔵書に加えるしかあるまい。

それにしても今日の講義は満員御礼の盛況でした。著名な能楽師の先輩も、第一線で活躍される能面作家の大家も、中心的な立場の能楽研究者の方も多数顔を見せておられました。

でも ぬえが最もビックリしたのは、休憩時間に ぬえに声を掛けてくださった「能楽兎者(のうらくとしゃ)」さんでした!どうして ぬえの顔を知っておられたのでしょう。能楽兎者さんはと~~っても豊富な観能歴。。というか、それが現在進行形で続いておられるのが驚異的な方で、その舞台についての感想や評価をブログに綴っておられます。それどころか能楽研究者とも親交が深く、みずから絵筆も執っておられるという。。努力家で多才な方。ぬえにも昨年の自分の会のあとに親しくメールを頂いて恐縮しました。今後ともよろしくお願い申し上げます~~(*^_^*)