石神井川(しゃくじいがわ)がすっかり気に入ってしまった。両岸はところどころ森だ。古木が鬱蒼と茂っている。小鳥が鳴いている。水量は少ないが潺潺として川底を水が流れている。もう紫陽花も咲いていた。うっすらした空色の花が群れていた。人が小径をしずしずと行き交う。雑踏東京を忘れさせてくれる。東京人は粋だ。こういうところを大切に残しているのだ。僕は、ここをもっと味わいたくて、自転車を降りてしばし憩う。汗を拭く。夕風が吹いて来る。日が暮れそうになるがもっと居たくなる。一人でいたってちっとも淋しくならない。もしかしたら、僕は死者で、僕一人ここへ遊びに来ているのかも知れないなどと思ったりする。死者の国からの旅人は、美しい生活をしている生者を観察する。ほほえましく思う。なつかしく思う。擦れ違う人は僕を死者の国からの旅人だとはちっとも思っていない。僕も思わせていない。なあんだ、死者になってからでないとこんなことも分からなかったのか、と僕は思う。生きていることの暖かさをやっと僕はここへ来て噛みしめている。お総菜屋さんがある。ここへふらりと立ち寄ってみる。生者の列のうしろに列ぶ。そして買い物の楽しさを分けてもらっている。
おはようございます。真夜中さまに朝の挨拶をいたします。いささかヘンです。早すぎますか。でももうすぐ空もしらんでくるでしょう。
おとつい、サイクリングをしているときに、行く手の路上に舞い降りてきた鳩をタイヤで踏みつけてしまいました。避け切れませんでした。殺してしまったかと思いました。鳩はびっくりしたことでしょう。すぐさまばたばたばたと樹上まで飛び上がって行きました。ごめんねごめんねを言って詫びました。産毛がたくさん散りました。さぞかし痛かったろう痛かったろう。あれからどうなったろうかと心配です。
東京の真夜中かさま。あの傷ついた鳩をどうかお癒ししてください。産毛を散らして寒がっているかもしれません。悪いことをいたしました。