困ったなあ困ったなあ。
おれはお天道様に正しい者とされている。正しい者とされて春の光が届けられて来る。
さあ、困ったぞ困ったぞ。不一致が辛いわい。おれは正しい者なんかじゃない。何度弁明しても同じ。
やっぱりお天道様はあいもかわらず、おれを正しい者として、春の光を届けて来る。
おれはほかほかになる。あたたまる。
おれはとうとう正しい者の顔をしてしまって、やすらいでいる。はっとする。
術にのっているおれを恥じる。恥じても恥じても同じ。そんなことは聞かなかったことにして、お天道様はやわらかなやさしい日射しを届けて来る。
*
隣家に辛夷の花が咲き出したぞ。きれいだ。辛夷の花もやっぱりお天道様から正しい者とされているようだ。やつはそれを素直に受け入れている。そこがおれとは違う。