喋らないと決めていたのに喋ってる猫が片足膝に乗せたら
薬王華蔵
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人には喋らない。喋れない。あの人のためにも喋れない。喋ったら最後わたしは罪の子になって秘密裁判に掛けられてしまう。隠し事をするしかない。朝起きてきてそう決めたら、楽になった。それがいけなかった。午後3時、お縁側に出たら、猫が寄って来て、わたしの膝に、信頼を込めたあったかい片足を乗せて来た。そこで決意のダムはもろくも決壊した。涙が溢れて来た。
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短歌は映写機。575で回りだし、77で止まる。その間に風景が見えただろうか、風景の裏手にドラマが聞こえただろうか。