かっ飛ばせ借金 打ち勝て倒産

 
 ‐オグチ経営研究所‐

 ☆★自分でできる経営の再生と整理★☆

  

保証人の無担保の土地

2008-08-17 | 事例
91歳。Kの父親の葬儀はしめやかに行われました。
会場にはあのU銀行の支店長の顔も見えて居ました。


Kは20年以上前、父親の跡を継いでやって居ます。
父親は先祖からの土地に、早くからのマンションや駐車場の経営し、
しかも、小さいながらこの地に紳士服の卸を始めて居ました。

20余年前に洋服卸は息子に譲り、以後悠々自適の日々を
過ごしていたのです。
そう、この会社でU銀行から少し借りたことがありますが、
引退の時は、すっかり返済して、もう何も無いと信じていたのです。

息子はやり手でした。
紳士服卸を礼服一本に絞ったのです。
日本中の礼服を独り締めにしてやろうと、彼は銀行から金を借り、
ビルを建て工場まで作ったのでした。
世はバブル景気の少し前、追い風でした。

あらゆる事がうまく行ったのですが、銀行借入もアット言う間に
膨らみました。いつの間にかU銀行も復活してメイン銀行となり、
借入は22億まで膨らんできたのです。毎月全部で3000万以上の返済。
しかし誰も気にしなくても商売はうまく回っていました。

急に問題となったのは今から10年以上前です。
バブルは破綻して、先ず不動産から、そして繊維も不況産業に
なったのです。Kも勿論大きな担保不足でした。

そんな時、U銀行の支店長からKの父親の駐車場を担保に入れるように
要請があったのです。
父親は殆ど銀行から借入はなく、数多い不動産は殆ど無担保です。

中でも都心に近いJR駅前の大きな駐車場は不動産業者の垂涎の的でした。
あの土地ブームにも離さなかった土地です。

Kはびっくりしました。
「保証人でない父親にそんな話は持っても行けません。ご勘弁を。」
と云うKに銀行は驚くことを言ったのです。
「お父さんは保証人ですよ。若しKさんに何かがあれば、当然お父さんは
 全て責任を追求されます。当行はあの土地さえ担保に入れて呉れれば、
 お父さんの保証人の義務を免責してもよいと考えて居ます。
 お宅を思った良い案ですがね。」
それでも首を振らないKをよそ目に、銀行は父親に直接談判をしたのです。

「父親が社長の時、融資を受けるために個人保証しました。
 包括根保証です。其れが今日でも生きております。
 だからこそ、20億以上も融資して居ります。」
そんな事が80歳を越した老人に解かる訳がありません。

息子を責めても、息子は父親がU銀行の保証人だったと一言も
言っては呉れなかったと逃げ腰です。

付き合いの深い顧問弁護士に相談しました。
はっきりしません。
「裁判になればフィフティ・フィフティでしょう。」
弁護士が強引に訴訟を進めないようならば負けに決まっています。

その頃始まった何年毎かにある保証人の確認のサインも勿論して居ません。
銀行はだんだんと脅し文句になってきています。
「今のままですとKさんに万一の時は、貴方の全ての不動産は
 無くなりますよ。と云って、今にうちに保全を考えて少しでも
 登記をいじる事があれば、不本意な がら当行は即座に詐害行為
 取消しの訴訟を起こします。其れより当行のお願いを飲んでくださいよ。
 貴方の保証人義務は免責いたします。」
あれだけ景気の良かった倅の会社も、秋風と言うより真冬に変わりつつ
あります。それでも父親は承諾もせず、ついにはU銀行と言っても会いも
しなければ電話にも出なくなりました。

父親は他界しました。
死後の相続の事は一言の遺言もなく、又相続人も生前に
相続の事は口にも出して居りません。

Kは母親と弟妹に頼みました。
「遺産は他は要りません。あの駐車場だけをU銀行の担保に
 してくれないか。そして、他の物件を守らないと、うちは
 そろそろ金利も払えなくなって居るから。弁護士に依頼しても
 費用だけは高く、勝ち味は無いと思うよ。」

皆の承諾を貰い、銀行と話し合った時に、銀行は慇懃の顔でしたが、
心の中ではせせら笑った様に思われました。
「何を言って居るのですか。Kさん。お父様のご生前中は少しでも
 気を楽にして差し上げようとあのようなことを申しましたが、
 今となっては違います。遺産は全て貸金のかたに当てて頂ます。其れと
 非常に不本意のことですが相続人からは私財を投げ打って頂きます。
 勿論当行はあらゆる面から法的検討はさせて頂きました。
 やって居る事に恥ずべきところは無いと確信して居ります。」
何の事は無い、父親の全財産どころか相続人の財産まで貰いますよと
いうわけです。
其の上、不満だったら訴訟でも何でもやりなさいと見得を切って居ます。

K以外は全員が相続放棄を致しました。
駐車場だけですと4億くらいのものがその他も増え、全体では7億くらいを
弁済して居ります。

駅の近くに大きな立派なマンションが建築されております。
Kはもう其れを見ても何とも感じません。
最後にサービサーとは結局2000万で和解をして居ります。

持ち前の商才で今はブライダルの事業に力を入れています。





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