第192回 2018年5月1日 「持って歩くのが楽しくなる!~兵庫 姫路の革製品~」リサーチャー: 生方ななえ
番組内容
千年の歴史を持つ兵庫県姫路の革製品。いま若者の間で大人気なのが、一枚の革を縫わずに仕上げる斬新なクラッチバッグ。東京の老舗百貨店でロングセラーの財布は、しっとり柔らかな革にカラフルな幾何学模様が映える。どちらも姫路ならではの白くて丈夫な革をいかした美しいデザインだ。さらに姫路に伝わる伝統のなめし技を独自の方法で復活させた職人も登場。探求心に支えられた職人たちの驚きの技を、生方ななえが徹底リサーチ!
*https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A201805011930001301000 より
1.姫革細工
東京の老舗百貨店でロングセラーの財布。
しっとり柔らかな革に、カラフルな幾何学模様が映えます。
創業90年の工房「大関」が作っています。
材料は白い牛革。型押しと手書きで絵付けをしていく。
工房には、型押しのための金型が500種類以上あります。
時代に合わせて新しい模様が生まれてきました。
金型をプレス機にセットし、型押し。
プレス機の音を聞きながら、圧力を調整しながら型押しをしていきます。
続いて、絵付けの作業。
絵の具を刷り込み刷毛でぼかし、奥行きを出しています。
そして、ミシンの縫い穴で柄が台無しにならないよう注意しながら、財布の内側へ部品を縫い合わせて完成です。
持つ人を華やいだ気分にさせる一品が仕上がりました。
2.白なめし革「姫路靼」(協伸株式会社・白なめし革保存研究会)
姫路「白なめし」の特徴は、菜種油と塩しか加えないのに、白くて柔らかい革が出来ること。
外国では、「白なめし革・姫路靼(ひめじたん)」を「Japanese White Leather」と呼びました。
化学薬品を用いずに自然の恵みだけをいただいて作る、人にも環境にも優しい「エコな皮革」として高い評価も受けています。
この「白なめしの技術」は1000年以上の歴史を持つ技法ですが、今から15年前、後継者はたった一人となってしまいました。
その唯一の継承者、新田真大(まとも)さんは「白なめし革保存研究会」を発足させて、この技法の研究を続けています。
姫路の「白なめし革」づくりは、原皮(牛の生皮)を川の水につけて脱毛することから始まります。
姫路は「播磨五川」と呼ばれる加古川、市川、夢前川、損保川、千種川を始め、その支流も多く流れるなど、「水源」に恵まれています。
その後、天日に晒し、塩となたね油で揉んで仕上げていきます。
しかし、完成まで2~4カ月と長い時間がかかる製法です。
「鞣し」とは、革の腐敗を防ぎ、柔らかくするのこと。
まずは革を殺菌する作用がある塩を投入。
太鼓(ドラム)を2日間で延べ4時間回します。
そして、革の中の腐りやすい成分と余分な水分を出します。
それを乾かし、その後は革の表面になたね油を塗っていきます。
これにより、革が保湿され、ひび割れたりしなくなるのだそうです。
この後再び天日で乾燥し、水で表面の汚れなどを落とし、塩を抜きます。
大きなヘラのついた機械で革を解ぐしていきます。
機械である程度ほぐしたら、仕上げは職人の手で「手ベラ」という道具を革を押し当て、左右から引き合います。
革は伸びることで、しなやかさと同時に白さも生み出していました。
3.所作(ノーノーイエス姫路アトリエ)
「No, No, Yes!」(ノーノーイエス)は、ファッションデザイナー・バイヤーをしていた橋本太一郎氏と、その高校時代の同級生でありグラフィックデザイン出身の河村真氏が立ち上げた日本を代表するレザーブランドです。
「所作」では、1点1点、裁断から組み立てに至る全ての工程において、専任スタッフによる完全自社製で行なっています。
番組では、こちらの牛革のクールなクラッチバッグが紹介されました。
一枚革を縫わずに折って成形し、一箇所で留め付けるだけといった斬新なスタイルのクラッチバッグです。
モチーフとなっているのは、結婚式のお祝いなどを1枚の布で包む「袱紗」です。
「お金を包む」動作自体を「所作」としてデザインされています。
そんな「所作」は、日本製皮革製品のコンペティションである「ジャパン・レザー・アワード2009」にてグランプリを受賞。
また平成25(2013)年には、ヨーロッパ最大の皮革製品見本市であるミペルにて最高賞の「ミペル・アワード」を受賞しています。
ノーノーイエス 兵庫県姫路市北条口3丁目51 姫路LACビル1F
デザイナー・河村真さんのクラッチバッグ作りでは、カラーリングのコンセプトが清涼感。
夏の滝をイメージし、水が落ちる感じを意識。
敢えて粗い筆使いで滝の躍動感を表現しています。
河村さんの求めるのは、鮮やかな色にするには真っ白、更に丈夫な革。
その要望に答えてくれたのが水瀬隆行さんが代表を務めるなめし工場「オールマイティ」でした。
兵庫・姫路市に工場のあるオールマイティ」の設立は平成20(2008)年。
前身である「太閤化革」は大正元(1912)年創業ですから、その歴史は一世紀を超えます。
メインで製造しているのはファッション関係の革で、小ロット多品種に対応しているのが特長です。
水瀬さんは発色の良い革を作るため、革に含まれている不純物を徹底的に取り除きました。
太鼓と呼ばれるドラムを回して、水洗いを12日間かけて丁寧に行います。
こうすることで白さは増していきます。
ただ、このままだと柔らか過ぎて強度が足りません。
そこで水瀬さんが用いたのが、植物の樹皮などから抽出した「合成タンニン」です。
これを革に含ませると、コラーゲン繊維の隙間をタンニンが埋め、ハリ・コシのある革になりました。
オールマイティ 兵庫県姫路市花田町高木290
*https://omotedana.hatenablog.com/entry/Ippin/Hyogo/HimejiLeather_1 より
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