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<経産大臣指定伝統的工芸品> 神奈川 鎌倉彫 

2021-03-13 06:28:28 | 経済産業大臣指定伝統的工芸品

 「鎌倉彫」

 陰影ある彫りの味わい、深みある漆の色調、そして、日本古来の素材である木の温もり。これらが見事に調和した伝統的工芸品、「鎌倉彫」。宋の影響を受け、仏具として作られはじめて以来、800年の時を超えて受け継がれ、気品と風格はそのままに暮らしに溶け込み広く愛されるようになりました。伝統を守りながら、つねに現代に息づく物づくりを目指す鎌倉彫は、誇るべき工芸品としていまも進化を続けています。

  歴史
 鎌倉時代~禅宗寺院から生まれた鎌倉彫~
 13世紀半ばより、禅宗の移入に伴い宋から伝えられた美術工芸品の中に、堆朱(ついしゅ)と呼ばれる盆、大香合(だいこうごう)などの彫漆品(ちょうしつひん)がありました。それらは漆を幾重にも塗り重ねた面に精巧な文様を彫刻した、大変高価で貴重なものでした。これに影響を受けた仏師たちがその意匠をもとに、新たな木彫彩漆(もくちょうさいしつ)の仏具を作りはじめたのが鎌倉彫の始まりです。

 室町時代~公家と書院と鎌倉彫~
 室町時代にかけて、京都の南禅寺、知恩寺、金蓮寺他、多くの寺院に伝えられる大香合や鎌倉国宝館の獅子牡丹文硯台(ししぼたんもんけんだい)など、また東北でも中尊寺、示現寺の椿文様の笈(おい)などの優品が生まれました。この時代の公家の日記「実隆公記」に「鎌倉物(かまくらもの)」という言葉が初めて現れ、以来、これら鎌倉ゆかりの木彫彩漆が一般的に鎌倉彫と呼ばれるようになったといいます。

 江戸時代~茶道の一般化と鎌倉彫~
 江戸時代、茶道の普及とともに、茶入、香合、香盆(こうぼん)が多く求められるようになりました。この頃は精緻な蒔絵が非常に発達を遂げましたが、一方、雅味(がみ)のある鎌倉彫も人々に好まれ、元禄に出版された「萬寶全書(まんぽうぜんしょ)」という茶道具の手引書にも「鎌倉雕(かまくらぼり)」の名が見られます。そんな時代の中で、侘、寂、粋など、江戸文化の香りを持つ鎌倉彫の作品も生み出されました。

 明治・大正時代~生活工芸品としての鎌倉彫~
 明治になると神仏分離令が公布され、続く廃仏毀釈運動によって仏師たちは仕事を失いました。これを転機に仏像制作から生活の中で使われる工芸品としての「鎌倉彫」に活路を見い出した仏師の中に、後藤齋宮(ごとういつき)、三橋鎌山(みつはしけんざん)の名がありました。明治22年、横須賀線の開通とともに鎌倉は別荘地として栄え、訪れる人々への日用品やお土産として作られるようになり、現在の鎌倉彫へと発展して行きます。

 現代~そして、現代へ~
 高度成長期を経て生活にゆとりが生まれた現代。大量生産の工業製品に対して手仕事の暖かさが求められ、鎌倉彫も多くの人に愛用されるようになりました。また、趣味としてカルチャー教室でも人気を呼び、愛好者は全国に広がっています。1979年、当時の通商産業大臣から伝統的工芸品としての産地指定を受け、伝統鎌倉彫事業協同組合を中心に後継者の育成や新しい製品づくりが積極的に行われています。 

*https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/shoukou/kamakurabori.html より

 仏像や仏具から日用品へ
 こんもりとやさしい風情の山、緑豊かな谷戸、目を凝らせば彼方に相模の海。古都・鎌倉は、風光明媚な地だ。
 今から800年あまり前、武家政治の中心地となった鎌倉では、中国の宋から伝来した禅宗が急速に広まっていく。禅とともに宋から入ってきた文物のなかにみごとな彫漆工芸品があり、当時の仏師や宮大工はこれと同じようなものをつくろうと試みた。そうして始まったのが、鎌倉彫である。歴史を紐解いてみれば、もともとは仏像や仏具から始まったものだが、しだいに硯(すずり)箱、文鎮、香合(こうごう)、鉢、盆、皿など、日常で使われる品々もつくられるようになっていった。それは、彫・紋様・漆がみごとに調和した、一つの小さな宇宙だ。

 「技はもちろん、背景にある文化を総合的に学びなさい」
鶴岡八幡宮からほんの少し足を伸ばせば、そこはもう鄙びた風情がどこか懐かしい扇ガ谷(やつ)の里。浄光明寺のすぐ隣に翠山堂工房を構える、木内晴岳さんを訪ねた。古武士の風格漂う、矍鑠(かくしゃく)とした人である。出身は信州、13歳のとき老舗の和菓子店へ奉公に出た。勉学の傍ら、繊細で芸術的な感性が必要とされる菓子づくりに精を傾ける。「でも、食べられたら一瞬でなくなってしまう――それが私には寂しかった。何か自分で作った“もの”を魅力ある形として残せる仕事がしたい、真剣に考えましたよ。」
 18歳で故郷を後にする。父が愛読していた歴史書に出てくる鎌倉の地にたどり着き、寸松堂・佐藤宗岳の門をたたいた。何でも身につけたい、自分を鍛えたい、木内さんのひたむきな態度に心打たれた師匠は、親身になって指導してくれた。先輩職人の前では生半可な知識を口にしてはならない。日本はもちろん東洋の古典を精読しなさい。鎌倉彫の技も含めて、その背後にある文化を総合的に学びなさい、と。師の教えは今、自らが後進の指導に当たるとき引き継がれている。

 作り手と買い手の間に、「遊び」が漂うような作品を
 工房にこもりひたすら目の前の仕事だけに追われる生き方を、木内さんはよしとしない。海外旅行にもよく出かける。行く先々で、魂を揺さ振られる強烈な体験もした。シルクロードを旅したとき、悠久なる時の流れに身を浸し、遠く仏陀の時代に思いを馳せた。アフガニスタンで出会った蝙蝠の図案に新鮮な驚きを感じ、スペインとポルトガルの国境近くで鍛冶屋が日本刀を打っているのを見て度肝を抜かれた。「鎌倉彫とは関係ないと思うでしょう。でも、じつはあらゆるものや風景のなかに図案のヒントが隠されている。なぜ引きつけられるのか、それはインスピレーションですよ。」
 職人たるもの、常に手は動かしつつ、いいよそ見をしながらいこう。伝統技術の上に革命的な感性を乗せていこう。そうして作り上げた品を、気に入って買ってくださる人との間で、何かを共有できたらいい、ゆとりとか遊びの心が漂えばいい、と木内さんはいう。

 作り手の人間力が作品に深みを与える
 十数年前、初めて作った盒子(ごうす)を買ってくれた医師の方から、こんな手紙をもらったことがある。――鎌倉を訪れたとき、たまたまあなたの作ったものを見た。気になったけれど、何となく買わずにやりすごした。2回目もそうだった。そして3度目、今度こそ迷わず手に入れた。今、私の目の前に置いてある。これを見る度、鎌倉の風景、そのとき吹いていた風、咲いていた花まで思い出す。いいものを作ってくれて本当にありがとう。
 「職人冥利に尽きるとは、このことでしょう。私はいっさい余計な説明はしていない。けれどもその方は、“もの”から何かを感じ取り買ってくださった。互いに会ってもいない、言葉を交わしていなくても、そこにはものを通した会話が成立しているんです。」
 彫・紋様・漆が融合した小宇宙、鎌倉彫。そこに作り手の人間力が加わり、その深みはいやがうえにも増していく。

 職人プロフィール

 木内晴岳

 1917年生まれ。35年に鎌倉彫の世界に入り、54年に翠山堂工房の経営につく。『現代の鎌倉彫』『鎌倉彫手鏡文様集』などの著書がある。

*https://kougeihin.jp/craft/0507/ より

 Description / 特徴・産地

 鎌倉彫とは?
 鎌倉彫(かまくらぼり)は、鎌倉市周辺で作られている漆器です。鎌倉時代を起源とし、当時中国から入ってきた美術工芸品の中に、堆朱(ついしゅ)、堆黒(ついこく)という木地に厚く漆を塗り重ねた品がありました。その工芸品に日本文化や柄を取り入れたものが鎌倉彫と呼ばれるようになった経緯があります。
当初は、仏像や仏具を作る仏師が中国の美術工芸品影響を受けて、カツラの木やイチョウの木を使用した器に彫刻を入れ、仕上げに漆を塗っていたものを鎌倉彫といいましたが、現在では、硯(すずり)箱や文鎮、皿、盆などの日用品も作られています。
 鎌倉彫の特徴は、文様以外の部分には刀痕をつけ、彫り跡をあえて残すところです。朱色の漆に墨を蒔き付けることで浮かび上がらせる手法も用いられ、800年もの間、彫りと塗りの技術が高められてきました。
 日常生活に彩りを加えてくれる鎌倉彫は、鎌倉市を訪れる人々を魅了しています。

 History / 歴史
 鎌倉彫は、鎌倉時代に仏師や宮大工によって生産が始まり、室町時代になると香を収納する香合(こうごう)として寺院で用いられました。その後、茶の湯の文化の発展するにつれ茶道具としても香合や茶箱に鎌倉彫が採用されていきます。
 江戸時代には仏具としての鎌倉彫から日用品にも使われるようになり、次第に唐物風の彫り物だけでなく日本独自のデザインが確立されていきます。
明治時代に入ると、明治政府が掲げた神仏分離令によって廃仏毀釈が起こります。この運動が広がり仏師は減りましたが、残った仏師のなかで仏像彫刻から鎌倉彫に技術を活かし発展させていったのが、後藤齋宮(ごとういつき)と三橋鎌山(みつはしけんざん)の2人です。以降、鎌倉彫は日用品として人々の生活に入っていきます。
 現代ではインテリアの一部に使うこともあり更なる発展を遂げ、1979年(昭和54年)には経済産業省により伝統的工芸品として認定を受けました。

*https://kogeijapan.com/locale/ja_JP/kamakurabori/ より


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