アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

日本にも姓を持てない人がいた時代が…

2016年06月11日 | Weblog
 「カクラバ・ロビ」…またその話しかって?まっ、そっ、そうなんですがね。
 およそ、20年前のことです。西アフリカにある、ガーナ共和国の、民族打楽器のイベントが日本で開催されました。ガーナから、当時は無名だったカクラバ・ロビさんが来ていました。私は、通訳の手伝いとして呼ばれておりました。このときは、大汗をかきました。なぜか?ロビさんの英語なんですが、学校教育は英語で受けたそうですが、母語が現地語(アカン語、モシ・ダゴンバ語、エウェ語、ガー語など、部族によって言葉が違う…)ということもあり、英語に極端な訛りがあるため、なかなか聞き取れず、何度も確認しなければなりませんでした。来日当初から随行している通訳は、かなり適当にやってましたので…こちらも少しは気楽になりましたがね。

 ロビさんは、ガーナのロビ族のコギリの名手(木琴のような民族楽器。ギリとかジリとか呼ばれ、形状によってコギリとか、なんとかギリとかに区別される。オオギリというのはないです。オオギリがあれば、桂歌丸師匠に演奏していただかなければね。オオギリの司会は辞任しましたが、ご存命中。コギリの共鳴部は、ひょうたん。大きなひょうたんを5~6個けん盤の板の下に吊してある。ひょうたんは東洋のものと思い込んでいましたが、アフリカに立派なひょうたんがあることが分かりました。缶詰の空き缶もつけてありました←コレホント)の奏者。ドイツ人の興行主がロビさんの演奏を聴いて、「この奏者を世界的に売りだそう」と考えました。
 世界的に売り出すためには、ガーナから外へ出なければならない。そのためには、パスポートが必要。そのためには、戸籍が必要。名前も必要・・・。
 つまり、およそ20年前のガーナには、名前も戸籍もない人がいたのです。全国民がそうだったのか、一部がそうだったのかは不明です。私の感触では、大部分が、名無し、戸籍なしだったと…。
 カクラバ・ロビという名前があるじゃないかって?実は、海外デビュー用に急遽つけた名前なのです。彼は、小柄なので、「カクラバ(蚤…ノミ)」と呼ばれていました。戸籍取得のため名を付けるにあたり、ロビ族のカクラバだから、「カクラバ・ロビ」としようとなったのです。
 カクラバ・ロビさんは、数年前に亡くなってしまいました。

 で、本題に入ります。(前置き、長っ!)
 私は、ボランティアで小学生とふれあうことが多いのですが、子どもたちの大半が、私をファーストネイムで呼ぶのです。これは、西欧並みですねぇ。それとともに、ミヤンマー並。えっ?ミヤンマー並がよく分からないって?
 ミヤンマーでは、通常、姓がないのだそう。アララ、およそ20年前のガーナと同じ?そんなわけで、カクラバ・ロビさんを枕にもってきたんですけどね。
 アウン・サン・スーチーさんは、「・」でくぎられているのですが、姓と名の区切りではないのだそうで…単なる音節の区切りなんだって!と、いうことは、「スーチーさん」と、呼ぶのは…「ごんべえさん」を、「べえさん」と、呼ぶようなモノ。

 ・・・児童は私をファーストネイムで呼ぶ。私も、ファーストネイムで呼ぶ。…よって、「姓」を覚えられない。でも、なーんにも困らない。

 「世界の名前(岩波書店辞典編集部編)」によると・・・生まれた曜日や場所を自分の名にする民族もいる。名付け・名乗りの文化は多様で、時代によっても変わる・・・。カンボジアでは姓で人を呼ぶのは不快とされる。伝統的に詩の吟唱を楽しむカンボジアでは、しばしば兄弟姉妹の頭文字を韻を踏むように命名する。大事なのは名の響きで、姓は一族ばらばら…。
そういうことになっているのかぁ!「姓」を大切に守り続ける文化…むしろ、不自然ということになる?これって、夫婦別姓への強力な追い風ですね。その前に、先週は、内閣府の男女共同参画会議が、旧姓を通称として広く使えるようにする方針をまとめましたね。本人が希望すれば住民票やマイナンバーカードに旧姓を併記できる。それがどうしたって?「女性活躍社会」のぉ…でしょ!

 何が書きたかったのかって?「女性活躍」じゃなくて、「姓」って意外に大したもんじゃないねってことなんですがね。
 毎年、姓を変えることができるってのも、おもしろいかも。