アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

命の尊厳、駄菓子に負ける

2020年03月04日 | Weblog
入院で同室の徳田さん。仕切りのカーテン越しに、いやでも耳に入ってくる声と音。暗澹たる気持ちになります。
 年の頃は、75~80歳。私はそう見たが、看護師さんに生年月日を尋ねられると、「昭和39年・・・」と!看護師は、「57歳ですね」と念を押しました。この二人、漫才のつもりか!と思いました。実年齢よりも20歳も老けて見えるなんて?
 どこが悪くて入院しているかは不明ですが耳に入ってくる情報は…あのぉ、盗み聞きではありませんから念の為。聞こえるんだからしょうがない。
1 透析センターに入院していたが、なんらかの病気の治療で市立病  院の泌尿器科に転院。退院後は、透析センターへ戻る。
2 患部は不明だが、内出血が日々広がっている。
3 毎日足を洗ってもらい、両足小指の治療をしてもらっている。
4 「痛いぃ、痛いぃ」と呻くことがある。
5 水分は、1日500mlと決められている。
6 出された食事以外は、食べないように再三言われている。

 さてさて、どの辺が暗澹たる気持ちにさせられるか?
 「水」です。看護師の目がないときは、うまそうに水(コーヒー、ジュースの類いなのかもしれない)を飲む。500ml?いえいえ、1000ml超ですよっ!病気治療のための水分制限でしょ!守らないでどーすんの?自分の命を…。
 食べるものにも呆れます。
 間食の常習者であることを先刻ご承知の看護師さん:徳田さん、お菓子買ってきて食べないでねっ!
 徳田さん:はいっ! …これがまた立派な、いい返事なのです。
 看護師が出て行くやいなや、「ボリボリ」と食べ始める。

 私は、彼に注意すべきであろうか?
 「ごくごく、はぁーっ(何かを飲んでいる音)」の度にカーテンを開けて、「こらっ、徳田!おまえ、また飲んでるなっ。自分の命をなんだと思ってんだ!」と、怒鳴りつけたくなる。
 ボリボリと音がし出したので、トイレへ行くふりをしてカーテンの隙間から覗いてみたら、袋菓子のほかにヨーグルトとチーズもテーブルに載っていた。健康を気遣い、発酵食品も摂取するようにしていることがうかがえる。えっ?感心するところじゃないって?そうだね。

 {飲むな、食べるな」と、注意して逆恨みされ、就寝中に絞められちゃあたまらない。見かけは80歳近いが、実際は57歳。お菓子を食べているから力はありそう。彼の命は大切だが、私の命も大切。
 この期に及んで、生命の尊厳ということについての思いをめぐらす能力に欠けていた弱年どきの浅はかさを恥じています・・・。(←急に真面目だなって?本心です。この文、なかなかいいでしょう!)