おとのくに♪♪

生徒さんのピアノレッスンで感じたこと、考えたこと、コンサートの感想などポツポツ綴っています。

英雄ポロネーズ エディション研究 ②

2023年08月17日 | エディション研究

かつて自分で訳したパデレフスキー版の校訂報告を使い、違いを見ていくことにします。

略語
FE フランス初版
GE ドイツ初版
A 自筆譜ファクシミリ
m. 小節


【校訂報告 ✐౽】
m.16-17(譜例1) 
この版(パデレフスキー版)では、GEのフレージングに従う。FEではm.16の終わりまでスラーが続いている。




上のヘンレグループの楽譜のコピーは、段が分かれていたものを隣に貼り付けています。
スラーはm.17の最初の音まで続いています。

エキエルは、ヘンレグループと同様です。

自筆譜のファクシミリを見ると、m.17の最初の音までスラーが続きその音から次のスラーが書かれています。Elisionです。
譜例の上の方にあるヘンレグループと同じです。


【校訂報告 ✐౽】
m.26(譜例2) 
GEでは、この小節とm.42の終わりが次のように書かれている。


m.74とm.164では、16分音符・16分休符、8分音符で書かれている。




左手3拍目をm.26、42、74、164とも、8分音符で統一している版と、16分音符+16分休符・8分音符に統一している版があります。しかし、GEは前半8分音符、後半16分音符になっています。

エキエルは8分音符に統一。

自筆譜のファクシミリは、m.164以外は8分音符、 m.164は16分音符・8分音符です。m.26の3拍目ウラの8分音符の前が黒く消されているのが見えますが、前後の音符は書き直した様子はなくはっきりとした8分音符です。

m.26

m.164



m.74は一瞬16分音符に見えますが、よく見ると中央のC音の加線です。
GEはそれを見間違えたのかもしれません。

m.74



GEと自筆譜ファクシミリをまとめると、このようになります。



いずれも、あの長いユニゾンのスケール4小節前の部分です。
フレーズを一瞬一度閉じるそのバスのリズムをどう捉えるかです。 現代では、版によってどちらかのパターンに統一して書かれているので、自分の考えで選択して良いと思います。

ショパンはおそらく、8分音符で統一したかったのではないかと思います。その方が安定感があり、力強いです。
m.164は右手の旗の16分音符につられて書いてしまったのかも・・?


今回はここまでです。✐౽


この曲を実際に弾いている最中ですと、この版の比較は興味が湧くかもしれません。
そうでない方は、いつかご気分が向いた時にでもお読みいただければと思います。

コメント
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