かつて自分で訳したパデレフスキー版の校訂報告を使い、違いを見ていくことにします。
略語
FE フランス初版
GE ドイツ初版
A 自筆譜ファクシミリ
m. 小節
【校訂報告 ✐౽】
m.16-17(譜例1)
この版(パデレフスキー版)では、GEのフレージングに従う。FEではm.16の終わりまでスラーが続いている。
この版(パデレフスキー版)では、GEのフレージングに従う。FEではm.16の終わりまでスラーが続いている。
上のヘンレグループの楽譜のコピーは、段が分かれていたものを隣に貼り付けています。
スラーはm.17の最初の音まで続いています。
エキエルは、ヘンレグループと同様です。
自筆譜のファクシミリを見ると、m.17の最初の音までスラーが続きその音から次のスラーが書かれています。Elisionです。
譜例の上の方にあるヘンレグループと同じです。
【校訂報告 ✐౽】
m.26(譜例2)
GEでは、この小節とm.42の終わりが次のように書かれている。
m.74とm.164では、16分音符・16分休符、8分音符で書かれている。
GEでは、この小節とm.42の終わりが次のように書かれている。
m.74とm.164では、16分音符・16分休符、8分音符で書かれている。
左手3拍目をm.26、42、74、164とも、8分音符で統一している版と、16分音符+16分休符・8分音符に統一している版があります。しかし、GEは前半8分音符、後半16分音符になっています。
エキエルは8分音符に統一。
自筆譜のファクシミリは、m.164以外は8分音符、 m.164は16分音符・8分音符です。m.26の3拍目ウラの8分音符の前が黒く消されているのが見えますが、前後の音符は書き直した様子はなくはっきりとした8分音符です。
m.26
m.164
m.74は一瞬16分音符に見えますが、よく見ると中央のC音の加線です。
GEはそれを見間違えたのかもしれません。
m.74
GEと自筆譜ファクシミリをまとめると、このようになります。
いずれも、あの長いユニゾンのスケール4小節前の部分です。
フレーズを一瞬一度閉じるそのバスのリズムをどう捉えるかです。 現代では、版によってどちらかのパターンに統一して書かれているので、自分の考えで選択して良いと思います。
ショパンはおそらく、8分音符で統一したかったのではないかと思います。その方が安定感があり、力強いです。
m.164は右手の旗の16分音符につられて書いてしまったのかも・・?
今回はここまでです。✐౽
この曲を実際に弾いている最中ですと、この版の比較は興味が湧くかもしれません。
そうでない方は、いつかご気分が向いた時にでもお読みいただければと思います。