略語
FE フランス初版
GE ドイツ初版
A 自筆譜ファクシミリ
m. 小節
【校訂報告 ✐౽】
m.28(譜例3)
FEとGEには、最後の和音にC1が書かれていない。
FEとGEには、最後の和音にC1が書かれていない。
最初に訂正です。
譜例のL.HにC音が入った方にGEを書いてしまっていますが間違いです。GEもC1音が入っていない下のグループです。
パデレフスキーの校訂報告には左手の和音のことしか触れられておりませんが、右手も版による違いがあります。ヘンレ版の校訂報告には右手のことも書かれています。
まずは左手を見てみます。
最後の和音にC音が ないものとあるものがあります。
まとめると、m.28は、
C音なし A、FE、GE、ヘンレ、ミクリ、コルトー
C音あり パデレフスキー
m.44、76は、
C音なし FE、コルトー
C音あり A、GE、パデレフスキー、ミクリ
エキエルは、自筆譜に忠実にm.28なし、m44、76あり。多数派と同じです。
同じような箇所なのに、m.28は「なし」が多数、m.44,76は「あり」が多数。
本来、どちらも「なし」多数か「あり」多数になるはずです。
これはどういうことでしょう。
この左手は、右手の前打音と関係していると考えている版が見られます。
右手を見てみましょう。
ヘンレ版の校訂報告には、FEは前打音にa2が書かれている、とあります。
自筆譜ファクシミリはどのようになっているかというと、a音は全てなしです。それに従っている版が大多数です。右手に関しては多数派が一方に絞られています。
パデレフスキーとミクリは考えてる様子が窺えます。
ミクリは、m.28 右a2あり+左C1なし、m.44、76 右a音なし+左C音あり。
パデレフスキーは全てa2なし+C1ありパターンです。
この事態を生んだのは、自筆譜のm.28によるものと思われます。
右aなし+左Cなし
m.44、76は、
右aなし+左Cあり
エキエルは自筆譜通りです。
結局、どう選択するか。
左手にCがある方が豪快だと思います。
下のパターンはCを省くことで根音Desと第7音Cがぶつかることを回避したのかもしれません。
ショパンは右手は前打音a音なしで一貫しています。次のdesの時にaを同時に弾くことで厚みが出ます。
m.28の左C音を弾くか弾かないかの選択になるわけです。
そのあとのユニゾンスケールが1回目は短いので、あえて1回目のm.28の左手にはCを入れず響きを多少シンプルにした可能性が考えられます。
そのように自分では解釈して自筆譜と同じにしてあるエキエルで行くか、1回目は単なる書き忘れと捉えパデレフスキーのように3回とも豪快に行くかの2択かと思います。
どれを選択しようが、そこに理由があれば良いわけで・・
今回はここまでです。 ✐౽
結構、頭の中がグルグル🌀しました。