デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



ガリバー船医(のちに船長)の冒険の話は、最も多くの人に知られてはいるが、その作品を最後まで読んだことのある人はあまりいないという類の話に入るかもしれない。
作者のジョナサン・スウィフトは「ペンは剣よりも強し」を実践し、最も効果をあげた歴史上の人物の1人だろう。とはいえ、興隆と衰亡、つまりは立場の逆転を身を持って経験し、かつペンで絶頂を極め、筆禍を被った人物でもあるのだが…。
物語でガリバー船医が小人の国(リリパット国)を冒険するのは有名だ。しかし小人の国のあとにも、冒険の続きはある。ブロブディンナグ(巨人国)、ラピュタ(飛び島)、バルビバービ、ラグナグ、グラブダグドリブ、日本、フウイヌム国という国々だ。
ガリバーがこれらの国々で見聞したことや身を持って体験したことは笑いでもって読めるのだが、同時に非常にシニックで諧謔に満ちている。例を挙げればきりがないが、二つだけあげよう。
ガリバーがイギリスの政治システムや裁判のシステム、貴族の教育、市民への政策などを称賛かつ弁護する形で、巨人国の王に説明したのはいいが、逆に
「君の国の制度にも、本来からいえば、まずまずのものもあるようだ。しかし、それらも腐敗堕落のために半分は無効だし、あとの半分はすっかりぼやけて汚点だらけではないか。」
と呆れられてしまうくだりとか、
ラピュタ(イギリス王がいる場所に見立てている)の圧制に対して、都市リンダリノ(アイルランドのダブリンをさす)が抵抗するくだりなど、スウィフトのそのペンでもって政治的闘争に明け暮れた当時のイギリスへの風刺がふんだんに盛り込まれているのが分かる。皮肉や当てこすりが強いとはいえ、現代にも通じるところが多々あり、非常に笑えた。
(ところで、物語中のラピュタの語源について関心をもたれた方がおられれば、ぜひ原作を読んでもらいたい。きっと驚かれるかも(笑))
第1部から第3部までは政治や法システムのカリカチュアを大いに楽しめる「ガリバー」だが、第4部のフウイヌム(理性を持つ馬)が、人間の正体ともいうべき醜悪な存在であるヤフーを支配するフウイヌム国の旅行記になると笑えなくなった。
晩年に差し掛かり人間嫌いになったスウィフトが、人間の醜悪な正体に対し自己も含めた嫌悪感を自身の鋭いペンで持って暴き出しているのだ。自身をヤフーであると認め、理性の馬を讃美する描写は悲痛なほどだが、ここまで読者の心を揺さぶる容赦なき徹底ぶりに、鬼気迫るものを感じるのは確かである。

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