デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



興膳宏 著『杜甫のユーモアずっこけ孔子』(岩波書店)、読了。

書名のとおり杜甫と孔子についてのみ書かれている本かと思いきや、いろいろな文人および古典に関するエッセイ集だったので正直戸惑った(笑)。第一部が『荘子(そうじ)』の世界からというのもあったろう。私自身、『荘子』については『老子』に影響を与えたというくらいしか知らず、内容に触れたこともなかったからだ。
そんなこともあって読了まで数ヶ月かかってしまった。しかし著者の紹介する『荘子』は、なんだかんだで『論語』の考え方を無意識に抱いてしまっている自分にとっては、非常におもしろく映り、結果的に『荘子』本編を手にすることになった。
また落語になった中国の古典の紹介もすこぶる興味を覚える内容だったし、紹興の農村に住んだ陸游(1125-1209)が実はエピキュリアン的な実践を自身に科していたことはこの本を読むまで知らなかった。
「兵車行」やかつての都へ帰る積年の望みが叶わない詩を詠んだ反骨の詩人のイメージが強い杜甫が、酒飲み列伝みたいなユーモアに満ちた詩を残しているという箇所を読んだとき、やっぱり学校教育で教えられる内容には限界があり、「教科書に載っているもの以外にもおもしろい詩がある」と知るのは難しいという思いを改にした。『源氏物語』で一番おもしろいところ、恋の駆け引きや怨念や男どもの滑稽な姿が教科書で紹介されないのと同じようなものだ。もっとも、興味や関心を抱き続ける子どもは周囲の目を気にすることなく、「ユーモアに満ちた詩」を自ら読み漁るのだろうが(笑)。
書名と内容との差異はともかく、中国の古典について聞いたことがあったり興味を覚えている人なら、辞典的知識やネット上のあらすじ知識状態から一歩踏み出すにあたり非常に助けになるエッセイ集だった。


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