デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



アルベール・カミュ(中条省平訳)『ペスト』(光文社古典新訳文庫) 、読了。

10年以上前にも再読したが、今回で三度目。こちらに書いている以前の感想を読むと、これを書いたのは誰だ?本当に自分か?と疑ってしまう。そして、何を書いているのか、何を伝えたいのか良く分からないものが放置状態だったのだなと、苦笑してしまう。それでも今回の記事が簡潔で読みやすく且つ伝えたいことがきちんと伝わるようなものになるかどうかは分からないが(笑)。
今回は中条省平著『果てしなき不条理との闘い アルベール・カミュ ペスト』(NHK100分de名著ブックス)を読んでからの読書だった。中条氏によるカミュの略歴を読んで、カミュがこの作品を構想し書き始めたのはナチス・ドイツに対するレジスタンス活動に身を投じる前であって、「ペストはナチス・ドイツの侵攻の暗喩」といった解釈は倒錯した読み方であるということを前提にした読書、というだけでも新鮮味を覚えた。
やっぱり『ペスト』という作品はカミュの幼少から青年期にかけて彼を襲い続けた貧困、青年時代に発症した結核を生涯にわたって治癒と再発をくりかえす不条理、アルジェ・レピュブリカン(共和派アルジェ)紙の新聞記者、ソワール・レピュブリカン(共和派夕刊)紙の編集長の時代に反戦的な論調の記事によって発禁処分となりアルジェリアでの仕事を失いパリに渡り、ナチス・ドイツの占領からフランスが解放されるまでの2年間妻フランシーヌとの別離を余儀なくされたなどの、生身の自分に降りかかった不条理の実体験に裏打ちされていなければ、『ペスト』という作品は書かれなかったし、作品からあふれ出すリアリティや迫力が読者を震撼させることはなかったであろう。



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