前後しますが、29日(土)に、学生を連れて神戸市の有馬温泉に、書を使った看板やデザインの研修に行ってきました。特に、一番の目的地は有名な「御所坊」です。ここは、創業1191年(平安時代最後の年)という老舗ですが、高度成長期に近代化に乗り遅れながら、発想を変えて、その伝統を活かしながら現代性も持たせることを考えます。そこで、神戸在住のデザイナー綿貫宏介氏に全面的にプロデュースを任せ、木造の伝統家屋と、南欧の雰囲気、そして篆隷書・六朝楷書を絶妙にミックスしたデザインによって改築し、瀟洒で魅力的な旅館に変身します。詳しくはサイトをチェックしてみて下さい。
http://www.goshobo.co.jp/goshobo/
以前、福知山ホテルで綿貫宏介氏のデザインを見て以来、私はそのデザインのファンになりました。ぜひ一度これを学生たちにも見せて、現代的に書をデザインの中にアレンジするとはどういうことかを考えさせたいと思いました。比較的徳島から近い有馬温泉に、綿貫さんのデザインを全面的に取り入れている旅館を見つけましたので、今回の訪問となりました。
社長令息で、経営陣のお一人であるイケメンの金井一篤氏に、お話を聞きながら旅館を案内して頂きました。「俗塵から離れた神仙境でお客様にくつろいで頂く」というコンセプトにこだわって、老荘思想をベースにしたデザインは、見る人の心をくぎ付けにします。
掛け軸や額はもちろんですが、部屋の看板やトイレ・消火器の表示、のれん、浴衣、避難経路図、食器に到るまでが、書の作品として考えられていました。空間そのものを作品として意識して、書もその中の一部に融け込ますのです。
今や、綿貫氏のデザインは、御所坊だけでなく、有馬温泉の多くの店で使われ、温泉全体の魅力を演出していました。書のデザインが町全体のイメージを作り上げている好例といえましょう。昼食に御所坊の特別室で頂いた「そば御膳」も絶品でした。学生にとって、たくさんの良い刺激を頂き、本当に感謝です。