9月26日(土)です。標記の植物は「りょうしょう」と読みます。「ノウゼンカズラ」の中国名です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%82%A6%E3%82%BC%E3%83%B3%E3%82%AB%E3%82%BA%E3%83%A9
四国大学の中庭の隅に植えられている多年生のつる植物です。

2年前までは森の木が鬱蒼と生長し、日が当たらなくなって枯れそうだったのですが、昨年・今年と森の木の枝が大幅に切られ、日当たりがよくなって、勢力を回復し、今年は多くの花を付けました。
この植物の原産地は中国南部の温暖な地域で、平安時代には日本に渡来していたようです。
中国での名が「凌霄」というのですが、「空を凌ぐ」という意味で、つる植物が背の高い木に巻き付いて高く上る様子を表した名前です。
四国大学図書館には「凌霄文庫」と呼ばれる古書籍の書庫があります。これは、徳島市国府町出身の歴史学者「後藤捷一」の蔵書です。彼の雅号が「凌霄」といったからです。
後藤捷一(ごとうしょういち) 染織史・郷土史研究家(1892〜1980年9月17日)
明治25年(1892)、徳島県生まれ。徳島工業学校染織科卒業。小学校、技芸女学校教員の後、大阪に出て染織・染料の雑誌を編集。大正12年、澤田四郎作と知りあった頃から郷土研究に関心をもち、阿波の地域史研究をすすめる。昭和9年に大阪民俗談話会(のちの近畿民俗学会)に参加。また戦前・戦後にわたって大阪史談会を主催し、『郷土史談』『大阪史談』を発行。昭和28(1953)年、三木文庫主事。三木家の修史と藍の研究を進める。
後藤氏の旧蔵書(阿波に関する地方史料および国文学関係資料など約17000点)は、没後、四国大学附属図書館(徳島市)に寄贈され、「凌霄文庫」として公開されている。
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中国南部の温暖地の原産のため、日本では西日本に多いということで、徳島市にはたくさんあります。日本では実は付きにくいと書かれていますし、今まであまり見たことがなかったのですが、今年は初めてこれを見ました。


やはり、今夏の暑さは、尋常ではなかったので、この植物にとっては、むしろ故郷の気候に近かったので調子が良かったのでしょう。これがさらに熟して茶色くなると、さやが割れて多くの種が飛び出すのだそうです。
北宋の米芾(1051~1107)が元祐3年(1088年、38歳)に書いた有名な行書の書道作品「蜀素帖」(しょくそじょう)の1行目にはこの「凌霄」が登場し、松の大木に巻き付いて高く上り赤い花を咲かせる様子が描かれています。
菅原道真が894年に遣唐使を停止して以来、平安末期の日本では中国とは正式な国交はなかったのですが、やがて北宋が建国されて中国が平和になると、博多商人が民間交流を進めて、中国の物資を運び瀬戸内海を通じて平安京にも届けました。この博多商人と手を組んで大きな利益を得たのが平家です。この膨大な利益を背景に、大きな権力を得たのが平清盛(1118~1181)です。彼らが瀬戸内海交通を重視し、海路の中間にある厳島を整備したり、首都を最終的に兵庫に移すのはそのためです。源平合戦でも、瀬戸内海をどんどん西に移動し、最後に九州に渡って再起を図ろうとするのですが、それに失敗して壇の浦で滅亡するのです。
この凌霄の種を日本に運んだのは、おそらく博多商人と平家だと思います。清盛は都の邸宅の庭にこの花を植えて愛でていたのではないかと思いますし、米芾の「蜀素帖」の詩は清盛誕生前の1088年には既にできています。米芾は書画家として有名ですが、漢詩人としては「米元章」の名で有名です。清盛の中年期には中国でも日本でもこの詩は知られていたはずです。
源平合戦の後に、敗れた平家の一部が四国山中に逃げてきて、都の文化を伝えたという伝説があちこちに残っていますが、あるいはその際に凌霄の種も持ってきたかもしれません。ここまで書いたのは、清盛の遺した文章の考証はしていませんので、あくまで私の想像ですが、花と人のつながりを歴史的に考えるのも面白いものです。
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後で、別なサイトも調べてみました。
http://www.forest-akita.jp/data/2017-jumoku/46-3nouzen/nouzen.html
私の想像は少し違っていたようです。このサイトでは、既に918年には日本に渡っていたということですので、遣唐使によって運ばれたものだとわかりました。
いずれにしても、清盛の頃には日本でも栽培されていたことは確かです。
この花は、徳島市内のあちこちで咲いていて、さらに房になっているところもあります。私の住居の近所の家の庭の花はこんな感じですが、実は付けていませんでした。少し種類も違うのかもしれません。

やはり、実をつけるのは珍しいことのようです。
西洋では「トランペット・フラワー」と呼んでいるそうです。花の形も色も、たいへん美しい植物です。