「新耳袋」という、
怪談を聞き書きした本を知ったのは去年のこと。
1冊の中に100話収められていて、
これをひと晩に読破すると、
何かしら怪異が起きる…かもしれないよ、というもの。
怖いもの見たさで、
何度か挑戦してるけどそれで一度も怪異に出会ったことはない。
さて。わたしが実際にこれまで出会った不思議な話。
いくつかあるけど、そのひとつをここで披露してみよう。
「男の子」
5年ぐらい前、
練馬区は地下鉄沿線のH駅周辺で、
一人暮らしをしていた時の話。
会社帰りに、突然雨が降り出した。
梅雨時とはいえ、かなりの本降りで、
ふだん傘を持ち歩くのは面倒だと、
少々の雨なら自宅まで走っていくタイプのわたしでも、
さすがにもH駅前のドラッグストアで傘を買った。
いつも通り夕食は何にしようかと考えながら、
歩いていて、ふと道端を見ると、
小学校に上がる前ぐらいの小さな男の子が、
傘もささずに、
しゃがんで悲しそうに涙を流している。
あれっ? どうしたんだろう。思わず足を止めた。
ものすごくかわいい顔だちをした男の子で、
外国の映画に出てくる純真な天使みたいだった。
「大人になったら、きっとモテるだろうな」と思った。
わたしがその子の目の前で、
立ち止まっても、
その子はわたしには目もくれず、
ずぶ濡れになりながら、
少し上目づかいで涙をぽろぽろこぼしている。
大雨が降っている上に通常ご飯どきの時刻なのに、
こんなに小さい子を外に出しっぱなしで、
もしかして虐待だったりして…。
心配になって「どうしたの?」と声をかけた。
そのとたん、その子はピタリと泣きやんだ。
そして、一瞬ものすごく驚いたような顔をして、
それからは無表情でわたしをぼうっと見つめる。
こちらもその態度の変わりように少しびっくりしたものの、
そのままにしておけない。
しかし、あれこれ話しかけてみても、
その子はそのままの表情で、
わたしをまばたきもせず見つめるだけ。
何を言ってもらちがあかないため、
わたしはあきらめて、
「ちゃんとおうちに帰るんだよ」と自分の傘をさしかけて、
その場を離れた。
それでも気になって、すぐに後ろを振り返ってみたら、
すでにその子の姿は消えていた。ひっくりかえった傘だけがあった
その子が消えたのは、
すぐに家の中に入ったからかもしれない。
お仕置きか何かで、人に見つかったから、
親がもう家に入れと言ったのかもしれない。
不思議なのは、
誰もその子に注意を払う様子がなかったこと。
その道端はバス通りで、
かなりたくさんの往来があったのに。
怪談を聞き書きした本を知ったのは去年のこと。
1冊の中に100話収められていて、
これをひと晩に読破すると、
何かしら怪異が起きる…かもしれないよ、というもの。
怖いもの見たさで、
何度か挑戦してるけどそれで一度も怪異に出会ったことはない。
さて。わたしが実際にこれまで出会った不思議な話。
いくつかあるけど、そのひとつをここで披露してみよう。
「男の子」
5年ぐらい前、
練馬区は地下鉄沿線のH駅周辺で、
一人暮らしをしていた時の話。
会社帰りに、突然雨が降り出した。
梅雨時とはいえ、かなりの本降りで、
ふだん傘を持ち歩くのは面倒だと、
少々の雨なら自宅まで走っていくタイプのわたしでも、
さすがにもH駅前のドラッグストアで傘を買った。
いつも通り夕食は何にしようかと考えながら、
歩いていて、ふと道端を見ると、
小学校に上がる前ぐらいの小さな男の子が、
傘もささずに、
しゃがんで悲しそうに涙を流している。
あれっ? どうしたんだろう。思わず足を止めた。
ものすごくかわいい顔だちをした男の子で、
外国の映画に出てくる純真な天使みたいだった。
「大人になったら、きっとモテるだろうな」と思った。
わたしがその子の目の前で、
立ち止まっても、
その子はわたしには目もくれず、
ずぶ濡れになりながら、
少し上目づかいで涙をぽろぽろこぼしている。
大雨が降っている上に通常ご飯どきの時刻なのに、
こんなに小さい子を外に出しっぱなしで、
もしかして虐待だったりして…。
心配になって「どうしたの?」と声をかけた。
そのとたん、その子はピタリと泣きやんだ。
そして、一瞬ものすごく驚いたような顔をして、
それからは無表情でわたしをぼうっと見つめる。
こちらもその態度の変わりように少しびっくりしたものの、
そのままにしておけない。
しかし、あれこれ話しかけてみても、
その子はそのままの表情で、
わたしをまばたきもせず見つめるだけ。
何を言ってもらちがあかないため、
わたしはあきらめて、
「ちゃんとおうちに帰るんだよ」と自分の傘をさしかけて、
その場を離れた。
それでも気になって、すぐに後ろを振り返ってみたら、
すでにその子の姿は消えていた。ひっくりかえった傘だけがあった
その子が消えたのは、
すぐに家の中に入ったからかもしれない。
お仕置きか何かで、人に見つかったから、
親がもう家に入れと言ったのかもしれない。
不思議なのは、
誰もその子に注意を払う様子がなかったこと。
その道端はバス通りで、
かなりたくさんの往来があったのに。