プロ野球 OB投手資料ブログ

昔の投手の情報を書きたいと思ってます

藤江清志

2023-04-15 15:35:05 | 日記
1953年
関学から南海に投じた藤江君は関西六大学では鳴らした投手だが、昨年八月の全日本大学野球選手権以外には神宮のマウンドを踏む機会がなかったので東京のファンには馴染みの薄い選手である、藤江君のピッチングは廿四五年ごろ五井(現近鉄)大沢(現熊谷組)両君とともに立大の投手陣にあって活躍した実兄藤江重幸君(現富士製鉄室蘭)を思い出してもらえばわかる、実に兄弟ともよく似かよったフォームで、サイド、アンダースローの技巧派投手である。私の見てきた範囲内での藤江君は初対面の打者には成功するが、二度目ではだめだったり、試合前半は好投していても、後半あえなく潰れ去るといった種類の投手のように思われた。それは彼が非常に多種類の球を持っており、しかも配合よろしく投球するので一度は必ず打者を幻惑することが出来ても、あまり多くの球を投げるため、球そのものの威力にとぼしく、ために一たびなれられると全く無力なものとなってしまうからだ、それにもう一つあまり多くの球を投げようと無理をするため知らず知らずのうちに身体に無理をさせ疲労を早めてしまっているのだ。彼は身長こそあれ、ヤセ型でいかにも弱弱しい感じを与える、大投手となるには体力的に大きなハンディキャップを背負っている、彼はこの自分の体をよく知っているからこそ、あのように多種類の球を投げるのだろうが、このようなピッチングにも体力が絶対条件だということを悟っていなかったことが、これまで彼が永続きのしなかった原因だと私は断言する。私はサイドスローからのクセのあるシュート、あるいは沈む球、浮く球と投法、球道、球質の技巧のあらゆる限りをつくして投げ込んで来る藤江君の現在のピッチングをもってしてもここ当分は十分プロの世界で通用すると思う、しかしそれだけでは先にいったとおり一度は成功しても二度、三度するにはきっと失敗してしまう。南海の投手陣をみるとエースの柚木君をはじめ中谷、大神と技巧派型の人が多く、またその人たちが効果をあげているようだが、決して先輩たちに追随する必要はない当分の間はただ一途威力のあるウィニング・ショットを投げ得るよりに努力してもらいたい、そうすることが藤江君の大成への正しい道であろう。

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佐藤公男

2023-04-15 13:01:05 | 日記
1953年


仙鉄に佐藤投手ありと天下の注目を浴びたのは廿六年の全国鉄道野球大会で、巧みなコーナーワークとブレーキの鋭い曲球を駆使して仙鉄を優勝に導くとともに、自らは最優秀選手に選ばれて以来である。宮城県の白石高出身であるが高校時代の戦績にはさして見るべきものもなく、最終学年の廿五年の高校大会の如きは県予選一回戦で敗退しているくらいだった、廿六年四月に仙鉄就職以来長足の進歩を示し六月に行われた都市対抗予選ではたちまちにして県代表となり東北大会に出場、まず一回戦は秋田旭友を、準決勝では釜石製鉄を破って決勝戦に臨んだが、ついに福島日東紡のために三日間の連投のすえ刀折れ矢つきて涙をのんだ。国鉄大会はそれから間もなく名古屋市八事球場に展開され、一回戦は不戦勝、二回戦は秋田鉄道で8-0のシャットアウト勝ち、次ぎは準決勝で志免と対戦3-1を以ってこれをほおり、決勝戦は四国の三門投手とわたりあい、3-0で全国制覇をなし遂げたわけである、全三試合を通じ連日完投し、いささかの疲労をも見せず奪った三振は対秋田で七対志免で六、対四国で六と計十九を数え与えた安打はわずか一、三、三の計七本に過ぎなかった最高殊勲選手になったのも当然であろう、これが彼の球歴における戦果の最大のものであった。それが二年目を迎えた廿七年は佐藤遊撃手(国鉄へ)を失ったのをはじめ、バックが極度に弱体化し彼の手腕も存分に発揮されず成績もあまりパッとしなかった、ことに新潟で行われた国鉄大会は関東代表の高崎鉄道に完膚なきまでに打ちのめされ、計十七本の安打を被っている。秋の産別大会では対いすゞ戦に先発投手として登板しているが早くも三回で交代している、これは彼にとって試練の年であったともいえよう、これによって彼が発奮し、健投するときこそ真の大投手となり得るときである。前述のように一昨年の好投時は実にコントロールもよく特にアウトコーナーぎりぎりの低目に入る球にノビがあって効を奏していた。もっとも彼のウィニング・ショットは鋭いアウト・ドロップであるがこの球をより効果あるものにしたのは実にいいシュート・ボールがあったからこそだ。昨年は不思議に打たれたと自身述懐しているようだがこれは前年ほど得意のノビのある球がなかったからである、投手の球にノビがなかったらあたかもフリー・バッティングの球に等しい、なぜ打たれたか、自らもその原因の発見に努めることももち論だが、こんなときこそ良き指導者がほしいものである。比較的やわらかい良いフォームであるが、ただ投球の際に腕をあまりにも後ろに引きすぎるため、腰の回転が乗らずとかく体重が後ろに残り、球の手離れが早くなるきらいがある、言葉をかえてこれを表現すれば、投手としてのモーションが非常に大きく、体の重心がかからない。指導者にこと欠かぬプロ野球で大いに基本的に訓練し出直す覚悟で精進することが大切である幸い猛烈な闘争心に富むと聞くが、ああmりファイトを燃やしすぎてムキになることのないよう闘志満々のなかにも、内に冷静さをもつことが投手として特に必要であることを心すべきである。

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