1959年
ことし広島カープは意欲的なチーム強化をみせた。投手陣に新人、移籍を含めた12選手が入団した。しかし大半が無名の高校生だけにすぐ使える投手ということになると井投手ぐらいのものだ。キャンプでは安定したフォームから、現在百五十球前後のピッチング練習を続け、また一方レギュラーのフリーバッティングには自らバッティング・ピッチャーを買って出るなど大変な張り切りようだ。懸念されたスピードも一段と加わり、十五日からは、カーブ、スライダーなど変化球を投げている。井はやせ型で一見、弱々しく感じられるが、それでいてノンプロ時代には連投と見かけによらぬタフネスの持ち主で再三、後楽園のヒノキ舞台を踏んでおり、昨秋の産業対抗野球大会には日鉄二瀬に初の栄冠をもたらす快挙を成し遂げただけに、小細工を使わず真っ向から勝負をいどむ度胸のよさと勝負強いことは定評がある。投手陣の特別コーチに当っている藤田省三氏(元国鉄監督)も「無理のないフォームだし、とくに指摘するような欠点はない。ただ投球する場合、バックスイングが小さいので単調になりがちだから、大きくすることによって是正し、スピードも増すので注意しただけ。さっそくこれを実行しているが好調のようだ」と言っている。白石監督も「井の強味はなんといっても制球力のいいことだ。先発、救援のどちらでも使えるだけにたのもしいし、人間的にもしっかりしている」とべたほめに近い。長谷川、備前につづく待望の第三投手が実現する日も近い。
ー調子がいいようだが。
井 毎日暖かいので非常にコンディションがいいですネ。
ーやせているようだが。
井 体重も変らないし、元気です。だいたいが小食のほうだから、太ろうと思っても簡単にゆきません、気にしないことにしています。
ーそれでスタミナの方は大丈夫?
井 ノンプロ時代と違ってトレーニングも十分積んでいるので心配はない。これで案外連投の自信もあるのですからネ。稲尾さんじゃないけど十分睡眠さえとれば、やれますよ。
ー変化球も投げているようだが。
井 少し早いですがネ。僕のピッチングは技巧派といわれるだけにより以上の制球力をつけねばと思って早めに投げているのです。
ー長谷川、備前両投手のピッチングをみた感じはどう?
井 長谷川さんの球なんか実に軽いようですが、あれで20勝されたのだから、やはりコントロールがいいのでしょう。まだそれにくらべて、僕なんか足元にも及びませんよ。
ーこれからのキャンプの重点は。
井 シーズンに間に合うように仕上げるつもりですが、制球力のほかにシュートボールに、もっと威力をつけたいと思います。
ー目標はどこにおいているの。
井 よくみなさんから言われるんですがネ、本当のところやってみねばわかりませんよ。まず上位球団を倒してみたいことです。オープン戦で各投手のピッチングを見たり、また自分で投げてみて何勝できるかだいたいの見当がつくと思いますが、ノンプロ時代いっしょにやってきた江藤(中日)だけには負けたくないですネ。
ー抱負は。
井 ただ一試合でも多く出て投げたいですネ。最低十勝はマークせねば・・。このたえにもスタートを誤らないようにすることが大事ですが、僕は制球力にはかなり自信を持っているのでなんとかやれそうです。
ことし広島カープは意欲的なチーム強化をみせた。投手陣に新人、移籍を含めた12選手が入団した。しかし大半が無名の高校生だけにすぐ使える投手ということになると井投手ぐらいのものだ。キャンプでは安定したフォームから、現在百五十球前後のピッチング練習を続け、また一方レギュラーのフリーバッティングには自らバッティング・ピッチャーを買って出るなど大変な張り切りようだ。懸念されたスピードも一段と加わり、十五日からは、カーブ、スライダーなど変化球を投げている。井はやせ型で一見、弱々しく感じられるが、それでいてノンプロ時代には連投と見かけによらぬタフネスの持ち主で再三、後楽園のヒノキ舞台を踏んでおり、昨秋の産業対抗野球大会には日鉄二瀬に初の栄冠をもたらす快挙を成し遂げただけに、小細工を使わず真っ向から勝負をいどむ度胸のよさと勝負強いことは定評がある。投手陣の特別コーチに当っている藤田省三氏(元国鉄監督)も「無理のないフォームだし、とくに指摘するような欠点はない。ただ投球する場合、バックスイングが小さいので単調になりがちだから、大きくすることによって是正し、スピードも増すので注意しただけ。さっそくこれを実行しているが好調のようだ」と言っている。白石監督も「井の強味はなんといっても制球力のいいことだ。先発、救援のどちらでも使えるだけにたのもしいし、人間的にもしっかりしている」とべたほめに近い。長谷川、備前につづく待望の第三投手が実現する日も近い。
ー調子がいいようだが。
井 毎日暖かいので非常にコンディションがいいですネ。
ーやせているようだが。
井 体重も変らないし、元気です。だいたいが小食のほうだから、太ろうと思っても簡単にゆきません、気にしないことにしています。
ーそれでスタミナの方は大丈夫?
井 ノンプロ時代と違ってトレーニングも十分積んでいるので心配はない。これで案外連投の自信もあるのですからネ。稲尾さんじゃないけど十分睡眠さえとれば、やれますよ。
ー変化球も投げているようだが。
井 少し早いですがネ。僕のピッチングは技巧派といわれるだけにより以上の制球力をつけねばと思って早めに投げているのです。
ー長谷川、備前両投手のピッチングをみた感じはどう?
井 長谷川さんの球なんか実に軽いようですが、あれで20勝されたのだから、やはりコントロールがいいのでしょう。まだそれにくらべて、僕なんか足元にも及びませんよ。
ーこれからのキャンプの重点は。
井 シーズンに間に合うように仕上げるつもりですが、制球力のほかにシュートボールに、もっと威力をつけたいと思います。
ー目標はどこにおいているの。
井 よくみなさんから言われるんですがネ、本当のところやってみねばわかりませんよ。まず上位球団を倒してみたいことです。オープン戦で各投手のピッチングを見たり、また自分で投げてみて何勝できるかだいたいの見当がつくと思いますが、ノンプロ時代いっしょにやってきた江藤(中日)だけには負けたくないですネ。
ー抱負は。
井 ただ一試合でも多く出て投げたいですネ。最低十勝はマークせねば・・。このたえにもスタートを誤らないようにすることが大事ですが、僕は制球力にはかなり自信を持っているのでなんとかやれそうです。