夕方、1週間分の煙草を買いに出かけた。
あたりは薄暗く、気分は充分憂鬱だった。
明日からまた、あの単純肉体労働だ。
つくづく自分の暮らしを呪った。
こんな状態になったのは、
社会のせいも少しあるが、
自分が“やることやってこなかったからだ”
ということは分かっている。
信号が青になり、自己嫌悪が渡り始めた。
スクランブル交差点の真ん中あたりで、
胸のケータイから「コンドルは飛んで行く」
のメロディが流れた。
これは、自分で入力した着信音です。
「もしもし…」
「おれだヨ~」
「もしもし…」
「わがっかー(分かるか)。おれだよー
今がら、みんなと飲むんだ。
この前電話したけど、おめェー出なかったんだ」
「いいな。おれも行きたいな。
でも、日曜日の夜じゃ行けないよ」
「また連絡するよ。
ちょっと待って、Sさんにかわるから」
茨城の友人だった。
ブラスバンドでチューバを吹いていたやつだ。
「もしもしー。ワタシヨー」
第3クラリネットを担当していた素敵な女性だった。
「元気そうだね。今どこにいんで(いるの)?」
「水戸だよ。これから下館に行くの」
「何人ぐらい集まんでェ(集まるの)?」
「15人ぐらいかな」
「楽しんでね。気をつけて」
「こんどねー。それじゃ」
高校のときのブラスバンド部の連中が集まるらしい。
みんなの顔(高校生のときの)が、次々に浮かんだ。
胸が熱くなった。
おれには、あいつらもいる。
がんばんなくちゃナ~。