妻籠め | |
佐藤 洋二郎 | |
小学館 |
独り身のまま初老を迎えた大学教員の男が、自分を慕ってくる若く美しい女子学生への恋慕を抑えられなくなる我が身に戸惑う。
そして、小説の舞台は、男の少年時代、青年時代の回想を巡り、男の、また作者の故郷でもある石見地方へと移っていく。
年甲斐もない男の恋心の機微が描かれることを期待して読み始めたのだが、宗教的で生と死の神々しさを感じさせるテイストであった。
どこか夏目漱石の小説(『こころ』とか『それから』とか)を彷彿とさせるところもある。
終盤明かされる衝撃の事実は、いくらなんでもご都合主義的で、やや興醒め。