写楽を巡るミステリーについては恥ずかしながらほとんど何も知らなかったんですが、知れば知るほど挑み甲斐のある謎であることを深く思い知らされます。
著者によれば構想20年ということですが、このように小説の登場人物を通じて結論に到達する過程を展開させられると、何だかこれ以外に真相はありえないんじゃないかと思わされてしまう。
それくらい、結論に到達していく終盤は高揚感があります。
さらに、間に挟まれる江戸時代パートが佳い。
蔦屋重三郎とか喜多川歌麿とか山東京伝とか、日本史の教科書で名前をみたような人物が生命を吹き込まれて甦ります。
浮世絵が書かれた当時、18世紀の終わり寛政年間頃の江戸の世相についても生き生きとイメージが湧く。
しかし一方で、小説としては不格好な点も多々あります。
まず680ページにも及ぶ大著でありながら、同じことを何度も繰り返して説明している部分が多く冗長。
しかも現代パートでの登場人物の間の会話が如何にも説明的。
主人公の子供が犠牲になる回転扉事故や、主人公が写楽にのめり込むきっかけとなった肉筆画や、謎めいた美人東大教授の素生など、冒頭のほうで投げかけられた要素が、伏線なのかなと思っていると最後まで全く回収されることなく放ったらかしのまま、中盤以降写楽の謎解きに終始してしまいます。
このへんの事情は著者自身によるあとがきにも心残りとして触れられていますが、もともと週刊新潮で連載されていたものなので、連載を進める中で収拾つかなくなっちゃったというのが本当のところのようです。
せっかく単行本化するなら、その際に整理してすっきりさせればよいのに、と思うのですが。
著者によれば構想20年ということですが、このように小説の登場人物を通じて結論に到達する過程を展開させられると、何だかこれ以外に真相はありえないんじゃないかと思わされてしまう。
それくらい、結論に到達していく終盤は高揚感があります。
さらに、間に挟まれる江戸時代パートが佳い。
蔦屋重三郎とか喜多川歌麿とか山東京伝とか、日本史の教科書で名前をみたような人物が生命を吹き込まれて甦ります。
浮世絵が書かれた当時、18世紀の終わり寛政年間頃の江戸の世相についても生き生きとイメージが湧く。
しかし一方で、小説としては不格好な点も多々あります。
まず680ページにも及ぶ大著でありながら、同じことを何度も繰り返して説明している部分が多く冗長。
しかも現代パートでの登場人物の間の会話が如何にも説明的。
主人公の子供が犠牲になる回転扉事故や、主人公が写楽にのめり込むきっかけとなった肉筆画や、謎めいた美人東大教授の素生など、冒頭のほうで投げかけられた要素が、伏線なのかなと思っていると最後まで全く回収されることなく放ったらかしのまま、中盤以降写楽の謎解きに終始してしまいます。
このへんの事情は著者自身によるあとがきにも心残りとして触れられていますが、もともと週刊新潮で連載されていたものなので、連載を進める中で収拾つかなくなっちゃったというのが本当のところのようです。
せっかく単行本化するなら、その際に整理してすっきりさせればよいのに、と思うのですが。
![]() | 写楽 閉じた国の幻 |
島田 荘司 | |
新潮社 |